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広報・調査部

【AgVenture Lab発 スタートアップ インタビュー】
サグリ(株)代表取締役CEO 坪井俊輔さん

衛星データをAIで解析し農地や作付け情報を提供

代表取締役CEOの坪井俊輔さん

 アクセラレータープログラム第4期に採択されたサグリ株式会社は岐阜大学発のベンチャー企業で、衛星データと人工知能(AI)を活用して農業課題を解決することを目指しています。代表取締役 最高経営責任者(CEO)の坪井俊輔さんに話を聞きました。


行政向け「アクタバ」「デタバ」 生産者・指導員支援に「サグリ」

――事業について教えてください。

 現在、衛星からさまざまなデータを取得することができるようになりました。その衛星データをAI(機械学習)の技術を使って解析することで、地上の農地がどのような状況になっているのかを予測しています。いかに教師データ(機械学習に利用する地上の現場のデータ)を作りながら向上させるかというのが重要で、そこが当社の強みでもあります。

 この技術を使い、行政向けの調査アプリケーション「アクタバ」「デタバ」、生産者や営農指導員向けのソリューションとして土壌分析ができる「サグリ」を展開しています。いずれもパソコンやタブレット、スマートフォンなどで管理することができます。

農地管理を効率化する「アクタバ」
作付け状況の確認に役立つ「デタバ」

 

――三つのサービスについて特徴を教えてください。

 「アクタバ」は耕作放棄地を探すことができるアプリケーションで、主に行政向けに展開しています。各市町村の農業委員会は農地法に基づき、毎年農地を調査しています。耕作放棄地か否か、今までは実際に人の目で見て確認し紙の台帳を作って管理していましたが、「アクタバ」を使うことで調査の効率化を図れたり、デジタルデータで管理したりすることが可能です。

 また「デタバ」は水田の転作作物が、例えば麦なのか大豆なのか野菜なのか、作付け状況を確認することができます。生産者から申請されている作物と乖離(かいり)がある農地を色付けして示すので、確認のためにすべての圃場(ほじょう)を訪問する必要がありません。どちらも農地管理の効率化を目的としています。

 そして「サグリ」は衛星データから作物の生育状況や土壌の特性を知ることができます。これは岐阜大学の技術を応用して開発しました。従来の土壌分析は土を採取し解析するため、時間や手間、分析費用もかかります。「サグリ」は圃場を登録することで、その圃場の土壌のpHや可給態窒素、陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)、全炭素の4項目について推定することができます。生産者は現場での手間をかけずに、いつでも土壌を分析できることが特徴です。また、時間の変化に沿って生育状況を確認することもできます。「サグリ」の生育分析や土壌分析から適切な施肥設計を行えるので、肥料コスト高騰による経費削減や環境に配慮した農業に取り組む際にも有効なツールとなります。

「サグリ」の圃場管理アプリケーションの例
 

――「サグリ」の利用者は?

 例えば70枚の圃場で使っているという生産者もいれば、数枚の圃場から始める人もいます。法人や個人、規模など問わず、さまざまな人が使えるように設計しています。現時点で、国内での登録農地は47都道府県にわたります。

――アクセラレーターに参画してどうでしたか。

 採択期間中に「デタバ」と「サグリ」をリリースしました。アプリケーションを全国へ普及するという大きなミッションがあり、そのユーザー候補となる生産者の声をヒアリングすることができました。また、ホクレンや全農石川県本部との実証試験で、腐植指数やpHなどの精度、石灰やリン酸、腐植などの有効性が確認できたことは当社にとって大きかったと思います。

JAグループのシステムと連携 「ザルビオ」「サグリ」の実証も

――JAグループと取り組みたいことは?

 まずは当社のアプリケーションを使ってみてもらいたいということはもちろんですが、同じく衛星データとAIを活用した栽培支援管理システム「ザルビオ(R)フィールドマネージャー」と「サグリ」の連携を実証していきたいと考えています。「ザルビオ」は作物の生育状況や病害・雑草の発生、地力などを見ることができます。「サグリ」の強みは土壌分析ができる点なので、双方の強みを生かし、生産者の営農をよりサポートしていくことができると思っています。

――今後の展開を教えてください。

  2030年の中長期では1億人の農家に提供することを目指しており、衛星であればそれほど大きなハードルにはならないと考えています。いろいろな国で誰もが使える状況にしていくという目標を掲げて進めています。現在、東南アジアやインド、アフリカ、ブラジルなどでもサービスを展開しています。

 日本は農家数が少ないため、諸外国に比べ食料安全保障や離農の課題があったりしますが、一方で日本農業が誇るブランド力やおいしさ、農地管理に対するデジタル技術では非常に先進的な部分もあります。スマート農業も含め、日本農業は海外の農業を置き換えていくポテンシャルがあると考えているので、海外農業に影響を与えられるよう、日本の農業に貢献していきたいと思っています。そして日本をはじめ、世界で農業が持続される環境を作っていきたいと考えています。

サグリ(株)のサイトはこちら

https://sagri.tokyo/

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