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広報・調査部

【インタビュー】全農経営管理委員 荒川隆氏 安心して暮らせる社会実現のけん引役に

 農水省で大臣官房長など要職を歴任し、今年3月から全農経営管理委員を務める荒川隆氏に、JAグループが進むべき方向性について聞きました。


あらかわ・たかし 1959年宮城県生まれ。82年早稲田大学卒業、農水省入省。2009年からの民主党政権下で食糧部長などを務め、その後も自公政権下で大臣官房長、農村振興局長など歴任、18年に退官。

 農水省で長年農政に携わってきた自らの知識・経験を、全農の経営管理委員としてJA系統の皆さまにお伝えできる立場となったことは大変ありがたい。もともと農業は国の政策と切っても切れない関係にあることから、農業・農村の関係者と政策を提供する農水省との間に信頼関係があり、目指すべき理念や政策目標が一致していることが何より大切だ。全農の経営管理委員として、その信頼関係の構築や理念・政策目的の共有化の一助となれるよう努力したい。

 例えば、先の農協改革についても、そのプロセスや改革内容について政・官・学を巻き込みさまざまな議論があったわけだが、それらの違和感や問題意識をいわばアウフヘーベン(止揚)する形で、現在、JA系統は自己改革を掲げ前向きに取り組んでおられる。このことは大変素晴らしいことであり、今後とも、多様な声に耳を傾け、独りよがりとなることのないよう留意しながら、前進していただきたい。

地域インフラ支える事業も視野に入れて

 JAは農業者の職能組合としての機能を十分発揮すべきだという議論は必要だが、一方で職能組合に純化することが正解だろうか。農泊や農福連携、鳥獣害対策など、地域で求められる施策はさまざまある。これだけ人的資源や資金力などを備えている組織は、地域ではJAしかない。その組織がしっかり地域政策にも関与することは、正組合員や准組合員、地域住民のためにも重要だ。

 その際、JAが地域政策に無償で取り組むには限界がある。そこでヒントになるのは、昨年、議員立法で成立した「特定地域づくり事業推進法」だ。人口急減地域で多様な事業者が協同組合を作り、むらづくりの事業を実施するもので、一定の要件を満たすと都道府県知事が認定すれば、特例でむらづくりの事業を有償で行える。残念ながらこの事業主体にJAは位置付けられていない。だが、この法律を参考に、過疎化が進む地域で一定の要件を満たすJAならば、員外利用制限を緩和し、地域インフラを支える事業などを有償で行えるようにするといった仕組みも考えられないだろうか。

新基本計画下での国民運動の中核へ

 4月に国が決めた新たな食料・農業・農村基本計画は、中小・家族経営、法人経営問わず光を当て、産業政策と地域政策をよりバランスよく進めるという内容になった。JAは職能組合としての本来事業をしっかりやると同時に、地域政策にも積極的に関与すべきで、全農も、中期計画の五つの柱の一つに「元気な地域社会づくりへの支援」を盛り込んでいる点を評価したい。JAグループの方々には、胸を張って地域のためにも頑張ってほしい。

 新基本計画では、食や農の価値を共有する国民運動の展開も盛り込まれ、その重要なプレーヤーとしてJAが位置付けられた。コロナ禍の下で、安易な食料の海外依存や過密な都市生活への疑問など、価値観の揺らぎが国中に起こっている。安心して暮らせる社会の実現へ、農業・農村が持つ価値を広く国民に訴え仲間づくりを行う国民運動の一員として、JAグループ・全農に期待したい。

 


読者プレゼント

 荒川氏の新著『農業・農村政策の光と影 戸別所得補償から農協改革・生乳改革まで 真の改革を求めて』(全国酪農協会)を50名様にプレゼントします。

応募先:JA全農ウィークリー zz_zk_zennohweekly@zennoh.or.jp

締め切り:令和2年11月30日(月)23時59分

※応募者多数の場合は抽選で当選者を決定いたします。また、当選の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。

※いただいた個人情報は、プレゼントの発送にのみ使用いたします。


 

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