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広報・調査部

プロフェッショナルを追う(8) JA全農営農・技術センター農薬研究室 山我 岳史(やまが たけし)さん

開発・試験研究重ねて省力で安全な農薬を提案

 全農グループには専門的な業務に従事している職員がいます。今回はJA全農営農・技術センター農薬研究室の山我岳史さんに迫ります。


―キャリアについて教えてください。

 大学では昆虫のウイルスについて研究していました。2015年に入会し、営農・技術センターの農薬研究室に配属され、18年から東北営農資材事業所で農薬推進や技術課題対応などを担当しました。22年から再び農薬研究室に勤務しています。

―農薬研究室とは?

 新農薬の開発や防除方法などの検討、試験研究に取り組む部署です。殺虫剤、殺菌剤、除草剤、環境・化学の4チームあり、私自身は入会時も今も殺虫剤チームに所属しています。

―仕事の主な内容は?

 今は殺虫剤チーフとしてチームを取りまとめていますが、天敵資材「バンカーシート」も担当しています。バンカーシートは、私が入会した時にちょうど上市(市場に出すこと)の直前でした。新しい資材だったので、性能評価や、いつ、どのように使えばいいのか、どんな作物に使えるのかなど、使用方法について試験していました。天敵は、上手に使うためのポイントがいくつかあります。上市して数年経った現在も、使い方についての研究は続けています。天敵以外にも、農薬研究室では農薬の試験研究を行っています。例えば既存の農薬でも、これまでにない使い方ができるのか、他の病害虫にも効果があるのかなど、さまざまな試験を行っています。

 こうした試験で得られたデータや結果は、技術者会議などで県本部に向けて発信しています。ただ、実際に農薬を使うのは生産者ですし、その生産者に推進、指導するのはJAの農薬担当なので、現場で使う場面を想定して資料を作ったり、情報を提供したりするように心がけています。

 また、新農薬などは、農薬メーカーと協力して試験研究を行うこともあります。メーカーと直接やり取りできるのは全農ならではだと思います。

肉眼で判別できないものは顕微鏡で確認
 

―これから取り組みたいことは?

 天敵農薬はもっと研究したいです。天敵は抵抗性がつきませんし、環境に与える影響も小さいです。うまく使えば化学農薬をしのぐ効果が得られることもあります。ただ、どうしても天敵だけでは安定した栽培ができないので、化学農薬とバンカーシートを組み合わせた「いちごハダニゼロプロジェクト」のように、分かりやすく効果の高い防除暦の作成にも取り組みたいです。適切な時期に必要な農薬を使うことで、無駄を減らし、農薬も上手に効果を発揮させることができます。

 また、新規剤の研究開発もできればと思っています。抵抗性ウンカ対策でメーカーと共同開発した「ピラキサルト」のような新しい農薬は、現場の課題を解決し、生産者の選択肢を増やすことができます。試験や研究を通して、生産者の利益につながるような活動をしていくのも、農薬研究室の役目だと考えています。

バンカーシートの研究でダニの数を調べる山我さん

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