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山形県本部

労働力支援 他産地や他企業とも連携し取り組み拡大 農業現場が抱える課題解決目指す

全農とJTBの連携協定 山形県本部で成果

 全農と(株)JTBは2021年4月1日、農作業を担う多様な人材の確保を目指し、農業労働力支援事業に関する連携協定を締結しました。山形県本部は同年6月、全国に先がけて事業を開始し、一定の成果をあげました。2年目を迎える今年は、九州ブロックや企業との連携にも挑戦し、さらなる取り組みの拡大と農業現場が抱える課題解決を目指します。


全国に先がけてスタート 多様な人材が活躍

 2021年は9県域でトライアル的に実施された農業労働力支援事業。山形県本部では6月に行われたサクランボの収穫をはじめ、キュウリの出荷調整、西洋梨「ラ・フランス」の収穫など、5つの作業で延べ654人の支援実績となりました。

 参加者の内訳を見ると、女性が全体の約7割を占め、年代別では10代から70代まで幅広い世代が活躍する結果となりました。また、1日単位で参加できることから、子育て世代や学生、シニア層やフリーターなどのほか、副業としての参加も多く、多様な人材が集まりました。

 山形県本部では、この需要がコロナ禍による一時的なものではなく、地域活性化や女性活躍、生活困窮者支援にも貢献し、地方創生にも寄与できる、持続可能な取り組みになりえるとして、確かな手ごたえを感じています。

農繁期が異なる産地との連携 九州から働き手を確保

 サクランボの生産量日本一を誇る山形県では、収穫がピークを迎える6月中下旬、毎年、労働力の確保が課題となっています。そこで、山形県本部や山形県などで組織する山形県農業労働力確保対策実施協議会は今年、農林水産省の「農業労働力産地間連携等推進事業」を活用。福岡県や大分県など、農繁期の異なる九州ブロックから働き手を呼び込みました。計40人の参加者が山形県に1週間ほど滞在し、サクランボの収穫作業などに従事しました。

 事業実施体制としては、山形県本部が、作業委託を希望する県内生産者の取りまとめや農作業受委託契約事務の代行など、全体のコーディネート役を担当。そして、JTBが働き先の園地の調整や、参加者の日雇い雇用契約の締結、交通手段や宿泊場所を手配した他、(株)菜果野アグリ・(株)菜果野アグリ福岡が、大分県・福岡県での農作業受委託事業の経験を生かし、参加する人材を募集しました。

 終了後に実施したアンケートでは、参加者・生産者ともにこの取り組みを評価する意見が多数を占め、事業継続を希望する声も多く見受けられました。また、この取り組みをきっかけに、参加者の県産サクランボ購入意欲が向上する傾向が見られました。

 産地間連携の取り組みは、労働力確保対策のみならず、農業関係人口の増加や産地のファン拡大につながる効果が期待できます。山形県本部では、10月にも西洋梨「ラ・フランス」の収穫作業で今回同様に九州ブロックとの連携を実施する予定です。

JA全農山形×JTB×JAL 企業単位での参加も可能に

 農業を通じた観光PRや産地の活性化、地方創生を目指した取り組みの方向性が一致したことから、山形県本部、JTB、日本航空(JAL)の3者連携が実現。また、この連携によって、企業単位での農業労働力支援への参加が初めて行われました。

 サクランボの収穫がピークを迎えた6月中旬、現役の客室乗務員で構成された「JALふるさと応援隊」のほか、JALの東京本社や東北支社の社員延べ72人が、16日間にわたってサクランボの収穫や選果・箱詰め作業に従事しました。

 これまでの取り組みでは、参加者個人がJTBと雇用契約を締結していましたが、今回は、農作業を請け負ったJTBがJALと業務委託契約を締結。これにより、JAL社員は副業などとしてではなく、業務の一環として参加することができました。

 副業の制度が整備されていない企業でも農業労働力支援に参加できるとして、山形県本部では今回をモデルケースに、新たな連携体制を構築し、取り組みの拡大を目指しています。

初めてのサクランボ収穫に慎重に取り組む(株)菜果野アグリ福岡の方々
サクランボの収穫方法を教わる九州からの参加者

サクランボの選果・パック詰めをする「JALふるさと応援隊」
「サクランボの収穫は初めて」という「JALふるさと応援隊」の2人

 

参加者・生産者の声

●産地間の連携について

参加した(株)菜果野アグリ福岡の久保恵利統括部長

サクランボの収穫は初めてでしたが、九州で生産が盛んなミニトマトの収穫と通じるものがありました。地元での農作業経験を生かして他産地の助けになれることがうれしかったです。産地同士が連携し、お互いの繁忙期を支援する取り組みは、これからますます需要が高まると思います。


生産者のたきぐちファーム滝口征司代表取締役

初めてとは思えないほど手早く確実な作業で心強かったです。県内の人手が足りなくなることは目に見えて分かる状況なので、こうして県外から支援してもらえるのは非常にありがたい。どんどん拡大させていってほしいです。


●企業間の連携について

参加した「JALふるさとアンバサダー」の髙瀨雅子さん

普段の客室業務と同じく、体力と繊細さが求められました。農業の楽しさだけでなく、その苦労も実感し、改めて生産者の方々には頭が下がる思いです。今後お客さまとお話しする際には、今日の経験も交えながら、山形県と山形県産サクランボの魅力を発信したいと思います。


生産者の鈴木克也さん

サクランボを収穫しきれないこともあったので、今回は本当に助かりました。この取り組みは、われわれ農家にとっても魅力的ですし、人手不足の課題解決につながる大きな一歩になると思います。

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