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AgVenture Lab

【Web限定記事】スタートアップ企業10社が成果発表

JAアクセラレータープログラム第5期

採択企業10社と野口代表理事理事長(中央列右)、農林中央金庫 奥和登代表理事理事長(中央列左)
JAアクセラレータープログラム第5期 成果発表会はこちらから

 

 AgVenture Lab1114日、「JAアクセラレータープログラム(第5期)」の最終成果発表会を開催しました。プログラムは189件の応募から採択された、食・農・くらしに関わるさまざまな社会課題の解決を目指すスタートアップ企業10社をJAグループが支援していく取り組みです。採択された各企業には農林中央金庫と全農の職員が約半年間伴走者として寄り添い支援し、今回の発表会で成果を発表しました。


(株)ベンナーズ

 ベンナーズは、「作り手よし」「使い手よし」「社会よし」そんな世界を目指し、総水揚げ量の約3割とも言われる未利用魚を活用した事業「フィシュル」を展開しています。「フィシュル」は、未利用魚をお刺身切りまたは切り身に加工して、調味、瞬間凍結、パウチした商品を消費者にサブスクリプションで提供するモデルです。プログラム期間中には、新たな仕入れ先となる漁港の開拓や協力加工会社を獲得するとともに、販路拡大として輸出にも取り組みました。今後は、国内でのサービス利用者増加や外食事業への参入、海外事業展開も計画し、引き続きJA、JFグループと連携していきたいと発表しました。

(株)ミライ菜園

 ミライ菜園は、農業の環境負荷低減を目指し、IT技術で病害虫被害抑制に寄与する防除DXアプリ「MIRAI」を展開しています。「MIRAI」は各地の気象データと当社独自の病害虫ビッグデータを基に、AIが毎日の病害虫発生を予測します(AI予報の対象作物はキャベツ、ブロッコリー、タマネギ、ネギ、ダイコン、イチゴ)。プログラム期間中は、JAへのヒアリングを通じたニーズ調査や実証試験に取り組むとともに、県域組織とのビジネスモデル協議などを実施しました。同アプリの病害虫発生予報に基づく適時適切な防除が実現できれば、農薬節減効果や収量向上が期待できるとともに、栽培指導レベルの高位平準化や業務効率化につながる可能性があり、今後もJAグループとの連携を継続し、実用化したいと発表しました。

ASTRA FOOD PLAN(株)

 ASTRA FOOD PLANは、農産物の生産・流通現場を含む生産工程で発生する広範なロス、いわゆる「かくれフードロス」の削減を目指しています。同社開発の「過熱蒸煎機」は、高温の過熱水蒸気によりスピーディーかつ低コストで、青果物の端材などを粉状に加工可能です。加工した粉は「ぐるりこ(C)」として販売しています。プログラム期間中は、JAグループの食品加工施設や大手食品企業との面談を重ねる中で、過熱蒸煎機設置に適する環境を探ることができました。また、アグリビジネス投資育成(株)からの出資獲得にも至りました。今後も原料調達力や食品企業との関係性をもつJAグループと連携していきたいと発表しました。

(株)RelieFood

 RelieFoodは「食物アレルギーのある人もない人も食を共有し楽しめる世界」を目指し、特定原材料など28品目不使用、プラントベースのお菓子ブランド「Issa Kitchen Tokyo」を展開しています。プログラム期間中は、JAおきなわの黒糖を使用した新商品開発や、都内ラグジュアリーホテルでの商品採用、自社工場設立に向けた施設見学など多様な取り組みを行いました。米粉を主原料とした商品の製造・販路拡大を通じて米粉の新しい可能性を広めるとともに、地域農産物を活用した商品開発など引き続きJAグループと連携していきたいと発表しました。

KDBI(株)

 KDBIは、革新的な水稲施肥技術の開発・普及による効率的施肥と環境負荷低減の両立を目指しています。現行の水稲栽培では、田植えと同時に緩効性樹脂被覆肥料施肥により省力化などが図られていますが、肥料成分溶出後の樹脂の殻が河川や海洋に流出することが課題となっています。同社は、田植え機に装着するアタッチメントを活用した粒状二段施肥法により、水田表層と土中への同時施肥を実現し、生産性を損なうことなく、樹脂被覆肥料に頼らない水稲栽培の実現を目指しています。プログラム期間中に行った複数の現地試験について、結果は分析中であるものの、土壌、肥料および品種の条件によっては慣行施肥と同等程度の収量が得られる可能性を示しています。また、同社主催セミナーをAgVenture Labで開催し、現地・WEB合計300人以上の関係者が参加しました。今後もJAグループとの協業を通じて現地試験を積み重ね、精緻なエビデンス作りに取り組みたいと発表しました。

mizuiro(株)

 mizuiroは、生産現場などで廃棄されている野菜などを原料としたアップサイクル商品「お野菜クレヨン」を展開しています。プログラム期間中は、47都道府県、47色のお野菜クレヨン原料の調達を目指して活動し、全国24カ所から廃棄野菜や果物の提供を受けることができました。また、より大量の廃棄野菜を永続的に循環するため、果物ジュースの搾りかすを活用したスケッチブックや梱包(こんぽう)資材の開発に取り組みました。「JAグループ群馬収穫感謝祭2023」や「農業WEEK」などイベントにも参加し、消費者への訴求にも注力しました。

 今後は、原料調達に加え、協業イベントなどの実施・開催や同社製品のノベルティとしての活用や販路拡大に向けてJAグループと連携したいと発表しました。

(株)フェイガー

 フェイガーは、農業全体の脱炭素化を現実的かつ持続可能な方法での拡大を目指し、農業由来のカーボンクレジット生成と販売を手掛けています。カーボンクレジットの認証には複雑な申請手続きが必要であることや、現金化にはクレジットの販売先を見つけるなどのハードルがありますが、同社はこれらをワンストップでサポートする仕組みを構築しています。プログラム期間中は、水稲中干し期間延長によるクレジット創出に取り組み生産者の拡大に向け、全国各地のJAグループ組織や生産者との面談を重ねました。次年度からの取り組み意向を示す産地がある一方で、収量や品質への影響を懸念する地域もあったことから、来年は実証試験を行い、収量への影響やバイオスティミュラント資材活用による中干し延長の影響の最小化を調査して懸念解消を目指すと発表しました。

 今後は、JAグループとのさらなる協業を通じて県域組織や地域JAとの取り組みを加速させたいと発表しました。

(株)TRINUS

 TRINUSは、「埋もれた資源に光をあて、新たな日常を共創する」ことを目指しています。現在、注力しているのは消費者向けに四季を感じる「枝もの」をサブスクリプション形式で提供するサービス「枝もの定期便」ですが、生産者の高齢化に伴う担い手不足から入手しにくい品種も出てきており、本プログラムを通じて供給力の強化に取り組みました。地域JAとの面談に加え、新規取り組み先として森林組合との連携、自社栽培への取り組み、さらには新商品開発など多様な活動を展開しました。今後は、自社栽培に取り組む枝もの農業立ち上げサポートや新たな取り組みに前向きな森林組合の紹介など、引き続きJAグループと連携していきたいと発表しました。

輝翠TECH(株)

 輝翠TECHは、開発した農業用AIロボットによる生産者の作業負担軽減やデータを活用した農業の実現を目指しています。月面探査技術を取り入れた同社のロボット「ADAM」は、収穫物などの自動運搬機能を基本とし、アタッチメントを追加することで除草や農薬散布機能を搭載予定です。プログラム期間中は、全国12県域を訪問し、農業関係者を参集したデモイベントの開催や生産者での実証試験を行うとともに、生産者ニーズのヒアリングを重ねました。また、生産者向け供給を想定したビジネスモデルの検討も行いました。今後も、プログラム期間中に関係構築した県域に加え、JAグループのネットワークを通じてさらに協業を進めたいと発表しました。

(株)AGE technologies

 AGE technologiesは「資産と想(おも)いを次世代につなぎ、日本の可能性をひらいていく」ことをミッションに、相続手続きがオンラインで可能になるサービス「そうぞくドットコム」を展開しています。相続は証明書の収集や各種申請書の作成など、煩雑で手間暇もかかりますが、同社サービスの活用により手続きの簡便化が図れます。また、本サービスは既に2.8万件の不動産登記実績があり、うち9400件は農地となっていることから、プログラム期間中に新サービス「そうぞくドットコム農地」をリリースしました。全国各地のJAグループ組織と面談を重ね、同社サービスの導入や本サービス機能を一部切り出した形での連携など、JAグループとの協業に向けて取り組みました。「中期的にJAグループとして相続・贈与手続きを強化できるようなサービスに成長させ、長期的には相続した資産である農地の利活用まで見据えたサービスを設計していきたい」と発表しました。


伴走者コメント

(ASTRA FOOD PLAN/ベンナーズ伴走者)
千葉県本部 生産資材物流部  岩井 諒さん

自身のスキルアップを目的に参加しましたが、スタートアップ企業の方々の熱意、仕事のスピード感、対話力など大変刺激になりました。特に商談がうまくいかなくとも全く落ち込まず、すぐ切り替えて次の行動を起こすところは私に足りないところで、この行動力は見習おうと思いました。

また伴走者もやる気がすさまじく、皆様のおかげで団結して良い成果が出せたと感じております。仕事に命がけで取り組む方々のエネルギーをひしひしと感じました。普段の業務では体験できないこと、人とのつながりが得られて感謝です。この経験を生かして今の仕事をより良くできるよう頑張っていきます。スタートアップ企業、伴走者、事務局の方々、ありがとうございました。

 


 
(ミライ菜園/AGE technologies伴走者)
京都府本部 管理部 久下 晃平さん

ミライ菜園は病害虫防除、AGE technologiesは相続手続き、と担い手・JAにとっての課題を解決できるサービスのため、期待値が高く、さまざまな方に興味を持っていただけました。その中で、JAグループを客観的に見ながら、担い手・JAに実際に価値を届けられる提案をスタートアップ企業と模索をしていく、普段の業務では経験できない、バイタリティ・スピード・柔軟性を感じることができた刺激的な半年でした。

 


 
(KDBI/フェイガー伴走者)
本所 経営企画部  竹内 諒さん

JAグループ以外の人たちと一緒になってビジネスを考えることは、私にとって初めての経験だったので、お互いの価値観や認識をすり合わせていくのにはとても苦労しましたが、「伴走者」という同じチームのメンバーとして彼らの考え方を間近で感じながら過ごせたこの半年間、たくさんの事を学べました。

業界知識を深めることができましたし、さまざまな方々とのつながりを作ることもできました。なにより、「JAグループの外にいる人たちのマインド」を知れたことが、最大の学びだったと感じています。各企業とも、自分たちだからこそ発揮できる強みを持っており、世間のニーズをしっかり捉えながらその強みを発揮できる場所に勝負を仕掛けていく姿は、JAグループや全農グループでも参考になると感じました。また、JAグループのみなさんの力を借りながら、彼らの事業が形になって広がっていくのを見ていると、「やはりJAってスゴイんだなあ」と思わされることばかりで、秘めたるJAグループの可能性も感じられました。あっという間の半年でしたが貴重な経験でした。送り出してくれた職場の上司・同僚にはとても感謝しています。また将来一緒に仕事ができることを願いながら、これからはファンとして、伴走先企業を応援していきたいと思います。

今後の展望を語るベンナーズの井口剛士代表取締役
ビジネスモデルを説明するミライ菜園の畠山友史代表取締役

成果発表をするKDBIの佛田利弘代表取締役
成果発表をする輝翠TECHのタミル・ブルーム最高経営責任者(CEO)

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