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広報部

対談 農福連携で労働力不足に取り組む 全農も一翼を担い、地域創生へ

全農 神出 元一 代表理事理事長×一般社団法人 JA共済総合研究所主任研究員 一般社団法人 日本農福連携協会 顧問 濱田 健司 さん

 障がい者が農業で働く「農福連携」が注目されています。全農としても取り組みをスタートするに当たり、農福連携の動きをリードする JA共済総合研究所主任研究員で一般社団法人 日本農福連携協会 顧問の濱田健司さんを招き、神出元一理事長と対談を行いました。


当初は無理と言われた農福連携
はまだ・けんじ 1969年東京都生まれ。東京農業大学大学院修了。博士(農業経済学)。農の福祉力、障がい者就農、農福連携などについて調査研究。農林水産省農林水産政策研究所客員研究員なども務め、著述・講演活動、さらには国、自治体、現場への助言・協力も精力的に行う。

濱田健司さん 農福連携の研究を始めたのは14年前です。その頃、農業関係者に話すと、「障がい者って何ですか」「障がい者に農業ができるんですか」という反応でした。また、福祉の方からも、「農業って難しいじゃないですか」「障がい者に農業ができるんですかね」と言われました。大学の先生にも、省庁の方にも、無理と言われました。

 でも、私は現場を見たんですね。現場を見たらできると確信しました。私はJA共済総合研究所の研究員なので、もともとJAの職員ではないですし、生産者でもなければ福祉の職員でもありません。でも、日本の農村地域に働く人がいなくなるという、非常に恐ろしいことになるという危機感がありました。

 たまたま、ある障がい者施設から、障がい者の賃金をアップしてくださいという相談があり、行ってみたら、ひと月1万2000円でした。衝撃を受けた私は「これは何とかしなければならない」と思いました。そのとき、ある障がい者、30代の下半身が不自由な男性でしたが、「何か困ったことはありませんか」と聞いたら、「何も困っていません」との答えが返ってきました。障がい者年金を月8万円くらいもらって、お父さんお母さんからお小遣いをもらって、不自由はないということでした。しかし、いつまでも続くものではありません。また、あるJAの介護施設に行ったら、そこの職員が「本当はもっと違う仕事ができるのに、内部障がいがあって介護施設で働いているんです」と打ち明けてくれました。

 私は、福祉の世界は何かおかしい、何とかしなければいけないと思いました。障がい者の就労のことを考えたとき、一方で人が少なくなっている農村のことを思い起こし、マッチングしたらいいのではと考えたのが「農福連携」でした。

神出元一理事長 農業部門だけで労働力不足に対処するのは不可能です。農福連携は、その大きなファクターになります。また、異業種連携も重要で、工場で働く人を農繁期に農業で働いてもらうと、工場としても、農業が賃金を支払う分、コストが抑えられます。また、農閑期に工場が製造計画を組めば、農業から工場に労働力を融通できます。

 「農泊」は農業に触れてみたいという方、外国人のインバウンドも含め、そういう方を、農業労働に参加してもらうことも考えられます。学校教育においても、農業との交流や農業体験をしてもらうことによって、それが強く印象に残ると、職業選択の際に農業を選ぶ割合が増えます。これはデータが出ています。ミッシングワーカー(働いておらず、求職活動もしていない人)が社会復帰への訓練のため、農業労働に参加することもあります。

 新規就農を確保するためには、親から子への承継だけでは将来おぼつきません。労働力支援の経験を積みながら、就農につながっていきます。

農福連携は協同組合らしい取り組み

濱田さん 農福連携は協同組合らしいと思います。それは、地域で困っていること、必要としていることを共に取り組むことにあります。農協が信用事業や共済事業をやっているのは、それが地域になくて困っていたからですよね。それでは、今地域で困っていることは何だろうと考えたとき、高齢化していて、生活の場がない、働く場がない、そういうことを一緒に考えることが重要だと思います。これからのJAの役割とは、地域の住民、地域の経済、地域の生活を支えることにあると思います。そうすることによって、地域に必要とされる存在になると思います。

 JAにはすごい可能性があると思います。農福連携を進めようとするとき、JAが動けば、あっという間に進みます。農福連携というのは、農福商工連携、農福介護連携、農福医療連携、農福教育連携といった「農福+α」で一層広がっていきますが、JAには直売所も選果場もあるし、介護施設も厚生連病院もあります。JAは今ある資源を使うと、地域ごとの農福+αの取り組みができます。

神出理事長 日本は、地域が疲弊して東京だけが生き残るということはありません。地域が活性化するのは、何をおいても、1次産業である農業が元気になること。元気になるということは、生産量が上がること、あるいは差別化した産品を生産すること。そのためには必ず労働力の問題を乗り越える必要があります。

 労働力の問題を支援することで、地域に人が集まり、お金が落ちて、商工会も潤うし、病院だって、学校だって充実する、これが地域創生の本当の姿だと思います。国がやるべきことでもありますが、全農が一翼を担い、自主的な取り組みとして進めていく。そのことによって地域が栄え、日本が栄えていきます。

 それぞれの分野に厚生労働省や文部科学省や内閣府などの官庁が関係しますが、役所がやってくれるということではなく、私たち全農が所管の省庁と協議して、福祉や教育といった世界にアプローチしていきます。

濱田さん 全農に期待したいのは、農福連携という言葉がまだまだ知られていない中で、全農が動くことで、連合会やJAに、できれば農家にも、そういうことがあるのだということを知ってもらうこと。まず農業サイドに一番やってほしいことです。

 私は一研究員ですが、研究だけではおもしろくなくて、いかに社会を変えていくかを考えています。初めは、「農業は社会的弱者のためにあるわけではない」と否定されましたが、現場で頑張っている方がいて、それを私が伝えることによって、徐々に認められるようになってきました。私は研究員でもあり、「総合プロデューサー」でもあります。現場も分かるし、企画もするし、人もつなぐ、研究も行う、全部やります。

 全農にもできるところからやってもらい、多様な人たちが一緒にいる社会、笑顔になれる社会を作りたいと思います。

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