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【インタビュー】日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会 古村伸宏理事長

JAと地域丸ごとの課題を一緒に解決していく連携へ

 働く人が出資し、全員が経営の主体となって働く「協同労働」。その全国組織である日本労働者協同組合 (ワーカーズコープ)連合会の古村伸宏理事長に、協同労働の現状や農業・JAとの関わりについて聞きました。


ワーカーズコープの歩み

 1971年兵庫県西宮市で高齢者事業団が産声を上げ、全国で「失業者・中高年齢者」の仕事づくりを目指す「事業団」が誕生。自治体から委託を受け事業が広がる。79年全国の36事業団が集い、「中高年雇用福祉事業団全国協議会」を結成。82年全国協議会が運営に携わる「直轄事業団」を千葉県流山市に設立、病院の総合管理を柱に全国に広がる。86年協議会から連合会へと発展。98年「労働者協同組合法」制定運動推進本部が発足、法制化運動を本格的に始める。95年介護保険制度開始を前にヘルパー養成を開始。ワーカーズコープ方式による「地域福祉事業所」づくりが広がる。2005年千葉県芝山町で「若者自立塾」を受託、若者支援事業を開始。13年センター事業団但馬地域福祉事業所が自伐型林業グループを立ち上げ、農業、林業を通じた循環型地域づくりが本格化。15年生活困窮者自立支援事業を全国80自治体で受託し事業を開始。市民参加のフードバンク、子ども食堂が全国に広がる。19年労働者協同組合法(仮)法案骨子ができ、法制化を目指す。


ふるむら のぶひろ 1964年、京都府峰山町(現・京丹後市)生まれ。86年中京大学卒業後、当時の中高年雇用福祉事業団全国協議会に入る。生協の物流委託の仕事からスタートし、物流関係の現場を多く経験。2017年から現職。

 ワーカーズコープという協同組合は、働く場所と仕事を自分たちでつくり出す協同組合というのが、一番シンプルな説明かなと思います。世界にもさまざまなワーカーズコープがありますが、日本の場合は、失業していたり、なかなか働く機会が得られない人たちが集まって、自分たちで働く場所をつくり出そうということで始まりました。

 働く機会をつくるという目的で立ち上がった協同組合ですが、40年やってくる中で、単に働く場所があればいいということではなくて、仕事の質を自分たちなりに高めて、自分たちの仕事に誇りを持つことで仕事も持続発展していくということになってきました。

多くの協同組合や農家と関わり農福連携

 中高年・高齢者の、しかもあまり資格や技術を持たない人たちが始めたのですが、最初は緑化や清掃の仕事がメインでした。その後、協同組合と名乗ってからは、生協の物流センターの仕事、JAの仕事も協同組合間連携として増えました。2000年に介護保険制度が始まってからは、ケア分野の仕事が一番多くなっています。例えば、高齢者介護とか、保育・子育てとか、若者の就労や自立支援、障害者のさまざまなケアも含めてです。これが事業としては一番規模が大きく、人に関わる仕事ですね。

 農業に関わるきっかけは二つありまして、大きなきっかけは東日本の大震災でした。経済評論家の内橋克人さんがよく言われる「食べ物、エネルギー、ケア」を自給し、地域で循環できるようなコミュニティーというコンセプトを、本格的に追求しようということになりました。

 その活動としては、ワーカーズコープの組合員みんなで、休みの日とか、手が空いたときに耕作放棄地や農家から借りた田んぼに行って、稲を育てみんなで食べるという、いわゆる小農みたいな感じですね。社会連帯活動と呼んでいますが、この取り組みは結構広がってきました。

 それからもう一つは、最近よく言われる「農福連携」です。10年ぐらい前から、困窮者の支援や、若者や障害者の就労支援という文脈で、農家の人たちにいろいろ手伝ってもらいながら一緒になってそういう人たちの農業・就労体験を引き受けることから始まりました。土に触れたり、命に触れたり、農家の人たちと交流する中で、体験に来たメンバーが、少しずつ会話ができるようになったり、仕事に興味を持つようになったりと変化していく経験をしました。こんな活動を農業に関わる分野として取り組んでいます。

 その地域の重要な、欠いてはいけない産業としての農業を、大々的にはやれないかもしれないけれども、いろんな人たちの関わりの中で成り立たせていく。そんな取り組みを地域のJAさんたちと一緒に創(つく)っていこうという話が出てきています。今後、一つ一つ具体化していくことになると思います。

 JAとワーカーズコープの団体間連携も大事ですが、一人一人のJAの組合員、つまり農家の人たちとワーカーズの例えば、障害を持っているけれども組合員として働いている仲間や若い組合員、そして子育て現場の組合員が出会って、組合員と組合員が触れ合うような取り組みを地域の中で行っていくのが、一番手応えがあると思います。職員とワーカーズの連携というのはよくある話なのですけれども、組合員と地域の中で、いろんな地域課題を自分たちの守備範囲を越えるようなことも含めて、やれるようになったら面白くなるだろうなと思いますね。

 そういう意味で、JA組織に期待するところは大きいですね。農福連携も、農業が福祉にとって有効だということもあるのですけれども、やっぱり農業って命を育てる仕事なので、農家の人たちは、障害があったり、引きこもっている人たちを一緒になって支えていく、育てていくという力を持っている方が、実感としてはものすごく多いなと。そういう組合員の方々の持っている力との出会いを広げながら、いろんな地域課題、個別の課題ではなくて、地域丸ごとの課題を一緒に解決していくような連携ができたらなと思っています。

みんなで作ってみんなで食べる農業活動の一環で、田植えをするワーカーズコープの組合員ら
 「労働者協同組合法」国会での成立目指す
 今、一番力を入れているのは「労働者協同組合法」をつくることです。法律をつくろうと言い始めて20年が経ちました。今の国会がどうなるか分かりませんけれども、つくる手立ては整ったし、内容的にも与党の協同労働の法制化に関するワーキングチームや超党派の協同組合振興研究議員連盟でも議論が重ねられ、多くの方から賛同いただきながら、法案の成文化が進められています。 労働法制は雇用関係が前提ですが、目指す法律はこの関係を担保しつつ、みんながお金を出し合って、いろんな決定にも参画して、そして実際にも働くというものです。一人一人が主体的に仕事をするとか、職場の中で違う個性や能力を持った人たち同士が、助け合いながら仕事を一緒にやっていくという、最近のはやりでいうとワンチームとして働くということです。「協同労働」は、じっくり話し合うので、効率的ではないけれども、最も人間らしく働けるというか、協同的に働ける仕組みじゃないかなと思っています。そういう働き方をもっと世の中に広げていきたいと思っています。

オンラインメディア紹介

 ワーカーズコープは、協同労働の実践や、一人ひとりの想いなどを発信するオンラインメディア「新しい働き方図鑑」を運営しています。
「新しい働き方図鑑」はこちらから
https://workstyle.roukyou.gr.jp/


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