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広報・調査部

【インタビュー】新著『東大卒、農家の右腕になる。』著者・佐川友彦氏

 9月1日に新刊『東大卒、農家の右腕になる。~小さな経営改善ノウハウ100~』が発売されました。不退転の決意で農業の現場に身を投じた佐川友彦氏が「イノベーションや制度改革などという前に膨大で明らかなやり残しが現場にはある」という気づきから、小さくともすぐに結果の出る課題解決を積み上げ、そのノウハウをネット上で無償公開し、今多くの反響を呼んでいます。本書は佐川氏がノウハウを公開するに至るまでの必然性に満ちた物語と、厳選された100の経営改善ノウハウで構成されたこれまでにない本です。著者の佐川さんにお話を伺いました。

 

 ―佐川さんは雑誌『地上』でも連載を持ち、多くの農家ともつながっているので既に有名人ですが、改めて、自己紹介と本書の狙いを教えて下さい。

佐川友彦氏 大学卒業後、外資系メーカー勤務後いろいろこじらせた時期を経て、宇都宮市の阿部梨園にたどり着きました。阿部梨園はおいしい梨の生産にこだわる3代続く家族経営の梨園です。私はそこで栽培の現場には極力出ずに経営改善の仕事をしていました。この本は阿部梨園で実行した業務改善のコツ、悪戦苦闘をもとにやって良かったことをまとめたものです。実務的なことだけではなく経緯やそこで起こったドラマなどを時系列で読者に追体験いただけるような本にしました。

経営改善は、関わる全員に恩恵あってこそ

 ―経営改善というとスタッフからの反発があったりと、スムーズに行うには困難が伴ったのではないですか?

佐川氏 それほど苦労しませんでした。要因は阿部代表の経営改善の覚悟が決まっていたことです。スタッフにも阿部代表からモチベーションとか団結する必要性を伝えてもらえました。業務改善の結果は経営者がもうかるためだけではなく、スタッフも含めた全員にとって恩恵があるものであるべきです。チームに還元することが前提の経営改善は序盤からすんなりとなおかつ楽しみながら受け入れてもらえました。

 ―「農家の右腕」というのは斬新な立ち位置だと感じました。JAグループでも営農指導員やTACがその役割を担うことが期待されると思います。今後も右腕的な人が増えてくると日本の農業界全体が良くなりそうですね。

佐川氏 私のように100%一つの経営体に時間を割くことだけが右腕ではなく、できれば農業界に関わる人すべてが、10%でも20%でも誰かの「右腕」になり、自分の得意分野で農家をサポートしてもらえるのが理想です。

 右腕は、現場では「人」を見てもらいたい。技術を見る・品質を見る・財務諸表を見るのと同じように、農家個人がどのような課題感や価値観をもっているかを見て、一つでも二つでも改善することで次のステージが見える。加えてJAには部会があるので、部会単位の仲間同士で経営改善に取り組むこともお勧めします。栽培技術を互いにオープンにするように経営改善もオープン化できれば素晴らしいと思います。

 農業は個人戦というよりは団体戦の側面もある。JAだからできる機能だと思います。これまでミクロな課題に取り組んでいましたが、現在はマクロな課題も見えてくるようになりました。私も農業界全体の右腕になりたいと思います。

作業記録きちんと残し段取りの改善から

 ―100のヒントの中からこれはぜひ実践してほしいというものを一つ選ぶとすればどれでしょうか?

佐川氏 「日報で作業記録を残す(#052)」です。自分の仕事の時間を記録して、段取りを改善していく、ダイエットに近い感覚です。特に農業は労働集約的なので、集計してみると想定していなかった課題が分かってくる。分析できる材料にもなる。メンバーが複数人いればどういう工夫をしている人が、生産性が高いのかも分析できます。野帳でも良いですが、最近はスマホのアプリなどで便利なものが出ています。取り組んでみると割とすぐ結果が出ます。

 ―佐川さんは課題を言語化するのが上手だなと感じました。課題解決には言語化のスキルは大事ですね。。

佐川氏 私も学生時代などはできていませんでした。言語化のスキルは正解のない阿部梨園での経験で得られたものです。序盤では問題の根っこはどこだろうというトレーニングはさせてもらいました。コピーライティング力は磨かれれば伝わりやすくなるかもしれないが、大事なのは現場側に伝わりやすい言語に翻訳することだと思います。

 ―最後にこの本で読者に最も伝えたかったメッセージをお願いします。

佐川氏 この本の一貫したコンセプトは「考える農業経営」です。私も阿部代表も「考える」ことをずっと続けてきました。新しい選択肢を探索するきっかけはまず考えること。考えながら悩んで、きれいごとではない判断も時にはあります。直接的に答えを得ようとするのではなくまず考えるというプロセスが大事だということです。

 それと、経営改善は難しいと思わないこと。経営改善はやったらいいことがあるし面白い。「やらないと駄目」ではなく、やったらやっただけ農場の価値が上がるし、喜ぶ人もいる。楽しんで経営改善してほしいです。  

 ―ありがとうございました。

 


50名様にプレゼント

『東大卒、農家の右腕になる。小さな経営改善ノウハウ100』(佐川友彦著、ダイヤモンド社 定価:本体1800円+税 ISBN:9784478108116)を50名様にプレゼントします。

応募方法
件名に「東大卒、農家の右腕になる。本プレゼント」、本文に郵便番号、住所、氏名、年齢、所属JA、電話番号、JA全農ウィークリーの感想をご記入の上、メールにてご応募ください。

応募先
JA全農ウィークリー mail:zz_zk_zennohweekly@zennoh.or.jp

締め切り
令和2年9月30日(水)23時59分

※プレゼントはJAグループに所属する方のみとさせていただきます。

※応募者多数の場合は抽選で当選者を決定いたします。また、当選の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。

※いただいた個人情報は、プレゼントの発送にのみ使用いたします。

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