若い世代にも向け情報発信力さらに

全農経営管理委員会 長澤 豊会長×歌手・タレント高橋みなみさん
長澤豊会長 明けましておめでとうございます。
高橋みなみさん 明けましておめでとうございます。
本日は新春対談にお招きいただきましてありがとうございます。昨年、全農会長に就任されたと伺いましたが、会長にとって2017年はどんな年でしたか。
長澤会長 会長に就任してから半年あまりたちますが、国民に理解されるような事業展開なり、理解醸成のための情報発信が極めて重要であることを認識しております。農協改革、全農改革の中でスタートし、その後の解散総選挙などもあり、会長のスケジュール的には、ゴルフで言えば18ホールじゃなくて、36ホールを回っている年ではなかったかと思います。

今回、高橋みなみさんをお迎えしてリーダー論、いわゆる引っ張っていく力などについてお話を聞くことが楽しみです。
高橋さん うれしいです。ありがとうございます。
昨年4月でAKB48を卒業して1年になりました。AKB48を卒業したのは、1人で歌手活動をしたいということが大きな理由の一つでした。夏に全国ツアーで15カ所を回り、いろいろな方々にお会いできたのと音楽の力をあらためて感じ、すごく有意義な1年でした。
会長はリーダーとして心掛けていることはどんなことでしょう。
リーダーは信念持ち先を見据えてこそ

長澤会長 一つは、やはりぶれないことですよ。それと自分の信念があるわけで、その信念が年とともに強くあらねばならないという意識があります。すべては組合員のために、これがベースにあります。さらには日本の食料安保を担っている、このことが組織として一番大切であり、組織を担っている職員が事業に対して自信を持てるように、トップとして一歩先、二歩先、そして俯瞰(ふかん)する目線が必要だろうと思います。それが、トップとしての指導力につながっていくと思います。
高橋さん かっこいいです。いや、すごいです。
俯瞰で見るということと、そして自分でない誰かのためにやるということがすごく大事なんですね。正直、自分のためだと、ちょっと頑張りきれないこともあると思うんです。組合員のためにと会長がおっしゃっていましたが、私も一緒に活動しているメンバーのために、そしてファンの皆さんのためにということがすごくあったので、そのことを頭に入れると、いつもよりすごい力が出てきたなと思います。
長澤会長 そのことは共通していると思います。私利私欲というものを捨てて先を見据えた中で、自分は何をするか、その後ろ姿を組合員、職員、あるいは国民の皆さんに見せることで評価は違ってくると思います。高橋さんもAKB48のいろんな考え方のメンバーを引っ張ってきたことは、大変素晴らしいことです。
高橋さん そう言っていただけると、すごくうれしいです。自分で何か決めなければいけないときとか、自信を持って「こっちだ」と言うんですが、全部正解を選ぶのは難しいです。進んだ先で「あっ、左だった」ということもあるんです。そういうときに後ろを振り返って、「ゴメンネ」と言える自分でありたいなと思っていました。
長澤会長 それは常日ごろのメンバーとの会話なり、許してもらえる関係が必要でしょう。当然、われわれもいろんな失敗を重ねながらも許してもらえる、しかし大きなリスクにつながらないということが大切です。全農はこれからどんどん成長していきますよ。その成長を信じて、まだまだ大きくなってもらいたいと思いますよ。
高橋さん AKB48グループのころは、大変なんですけど、みんなで夢をかなえる、そうゆうことが楽しかったです。今は卒業をして、一個人としてお仕事をしているので、自分自身を「ドンドン」とたたきながらやっている感じです。
長澤会長 今まで総監督としてやったことはすべて無駄にはなりませんから。すべて必ず血となり、肉となっているはずです。私の経験上、そうです。分野は違いますが、人間の生き方としては同じことではないかと思います。
高橋さん ご自身を奮い立たせる時にやっていることはどんなことでしょう。
長澤会長 高いハードルを自分に課すということですよ。
高橋さん 高いハードルですか。
長澤会長 自己宣言をするということですよ。私はこうゆう風にやる、こうゆう風になると。そのためにはいろんな人の力が必要です。そして人を動かす。いかに人の心を動かすかが大切です。結果としての実績もなければなりません。そういった意味で高橋さんは、実績があるわけですよ。やってきたことを自信につなげて、さらに深化させるために、どうすれば自分が思っている仕事を実践できるか、絶えず私だったらこうすると。
連続性なんですよね。連続性がなければ成長はないわけで、大いに期待しています。
高橋さん 会長の言葉の力がすごいですね。すべて教えていただいたと思います。ありがとうございます。
おいしさあふれる全農提供ラジオ番組
長澤会長 高橋さんはTOKYO FMでパーソナリティーを務められている「高橋みなみのこれから、何する?」という番組は好評とお伺いしていますが、どのような番組ですか。
高橋さん 一昨年4月から始まった番組です。AKB48プロデューサーの秋元康先生が「高橋みなみ、(AKB48を)卒業したら何すんの。それをタイトルにしちゃえば」ということで、「高橋みなみの これから、何する?」という番組になりました。中身としては「ベスト3先生」というのがあります。いろんな専門家の方に深く教えていただくコーナーです。会長ぜひ、いらしてください。
今まで総監督と言う立ち位置にいたのですが、分からないことを分からないとあまり聞けなかったんです。今はラジオを聞いて下さっている20代、同世代の皆さんと一緒に政治や身の周りの疑問を専門家の方とお話して深掘りしたり、音楽をかけたりと密度の濃い2時間です。
長澤会長 全農が提供するTOKYO FM放送の「JA全農COUNTDOWN JAPAN」や「あぐりずむウィークエンド」はご存知でしょうか。
高橋さん 「あぐりずむ」は移動中によく聞いています。農家の皆さんやいろいろな方に電話をつないで話していることを聞くと、「おいしそうだな」と思わず耳を傾けてしまう放送で、素敵だなと思います。
長澤会長 全農はこれまで、広報が不充分でした。PB商品の開発や環境にやさしく安全・安心な農産物を生産するさまざまな研究もしています。FM放送を使って全国に全農の取り組みや食に関する情報を発信することで理解を深めてもらうことが重要になっています。高橋さんはパーソナリティーとして発信力が強い、なおかつ若い男性や女性層の支持が高いと聞きます。われわれも若い層をターゲットにして、高橋さんのパーソナリティーを借りて番組を作る場面も出てくると思います。
高橋さん お待ちしています(笑)。
愛がこめられた日本の農作物
長澤会長 高橋さんは、コンサートなどで日本全国各地を訪れていると思いますが、特に印象に残っている食べ物や、印象に残っている景色があれば教えてください。
高橋さん AKB48の時代は、(地方に)行って仕事したらすぐ帰ってくるような状態で、その土地を楽しむ時間があまりありませんでした。昨年、自分で全国ツアーをして、やっとその土地のいいものだったりとか、おいしいものだったりをいただく機会をたくさん持つことができました。日本はおいしいものであふれていますね。びっくりしました。
長澤会長 世界の中で果物は、日本が世界一ですよ。リンゴでも何でも。アメリカに行って食事しても、果物がおいしいという感覚はないですね。最近はトマトがおいしいですよ。
高橋さん トマトですか。
長澤会長 いろんなトマトがあります。最近は高糖度とか。全農が開発した「アンジェレ」もおいしいです。ぜひ食べてみてください。
高橋さん 実は私、ミニトマトが苦手なんです。トマトは食べられるようになりましたが……。こちら(アンジェレ)は、形がかわいいですね。いただきます。食べやすいですね。
長澤会長 フルーティーでしょう。
高橋さん これはおいしいです。

長澤会長 日本の果物、野菜は安全・安心でおいしいと世界の中でも評価されています。来日外国人に日本食、和食がブームになっています。日本で刺し身を食べたい、おいしい果物を食べたいと、東京から地方に関心が移りつつあると思います。地方には在来作物を含め、おいしいものがいっぱいあります。2020(東京オリンピック・パラリンピック)に向けて来日観光客が増え、味わっていただく機会が増えていくと思います。
高橋さん すごいですよね。海外にはない繊細さや、甘さとか軟らかさなど、日本人の食に対する愛が感じられます。日本は特別だと思います。
長澤会長 日本は国土が狭いが故に、高品質のもの、作り手が土などいろいろな研究をやりながら品種改良、気候に合った栽培で産地化、ブランド化を図ってきました。AKB48はブランドでプレミアが付いています。芸能も農業も一緒ですよ。
被災地支援で歌の力を再認識
長澤会長 高橋さんは、東日本大震災直後からAKB48のメンバーと被災地支援に訪れ、個人で活動されている今でも引き続き被災地で支援活動を続けられています。被災地ではとても元気をもらいっていると思います。高橋さんはどのような思いで被災地支援をお続けになられているのでしょうか。
高橋さん 東日本大震災は日本にとっても、私にとっても大きなできごとだったと思います。自分自身が変わるきっかけにもなりました。
2011年は20歳ぐらいだったので、どんな行動を起こせばいいのか、正直分かりませんでした。秋元(康)先生が「われわれにできることはないか。そうだ出向こう」といったことで、被災地に行くきっかけとなりました。震災の1カ月後からは、6人ずつ被災地に行かせていただきました。
最初に心の中で思ったのは、自分たちにできることはないんじゃないかということでした。仮設の中でAKB48の楽曲を歌わせていただいたら、子どもたちが「AKB48だ」と喜んでくれたり、おじいちゃんおばあちゃんたちが、「来てくれてありがとうね」と言葉を掛けてくださって、逆に自分たちが元気をもらったと思います。自分たちにできることがあるということもそうですが、その時はアイドルで良かったと思いました。皆さんが知っている曲があって、子どもたちが笑ってくれる、これは続けていきたいなと。AKB48在籍中は他のメンバーと何十回と被災地に足を運びました。何年かたつと「続けてくれる人がいてうれしい」と被災地の方々に言われ、やれることはやりたいと続けてきました。
AKB48を卒業し形は変わりますが、あの時いただいた「ありがとう」の言葉に返していきたいと思っています。
長澤会長 立派ですね。私の山形県でも支援活動を続けています。続けるということが大切です。日本では個性が大切だ、個人が大切だといわれ、これも大切ですが、共に生きる、共に協力しながら助け合う共生社会を育むという意味では、高橋さんがやってきた活動は素晴らしいものです。
高橋さんは今年、どんな年にしたいですか。抱負をお聞かせください。
高橋さん AKB48時代も感じていたのですが、歌には力があって、言葉は通じなくても音楽を聴けば、勇気が湧いたり元気が出たりすると思うんです。被災地での活動の中でも感じていました。今年1年も、きちんと歌手活動をしていきたいと思います。またTOKYO FM「高橋みなみの これから、何する?」では自分の言葉で発信して、きちんと伝えていきたいです。
長澤会長 私は経営基盤の強化を所信表明や記者会見で言ってきました。経営をしっかりするため、スピード感を持ち、「全農変わったな」「全農を利用したいな」と組合員に言われるような事業展開をしっかり実践していきたいと思います。国民の理解もなければなりません。もっともっと広報力を強化していきます。
和食が世界の文化遺産となりました。全農として海外戦略を展開しています。さらに打って出たいと思います。全農グループ職員は2万3000人います。このベクトル、ここの力を強めていきたいと思っています。
高橋さん、楽しい話をありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。

ゲストプロフィル
高橋みなみ(たかはし・みなみ)1991年、東京都生まれ。2005年AKB48の1期生として芸能界デビュー。AKB48グループの初代総監督も務めた。2016年4月、AKB48を卒業しソロ活動を始める。ラジオやテレビ・CM等、歌手・タレントとして多方面で活躍する。TOKYO FM「高橋みなみのこれから、何する?」(月曜~木曜、午後1時~同2時55分放送)のラジオパーソナリィティー。
