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畜産生産部

畜産事業の研究最前線 3

 畜産事業の研究所を紹介する当シリーズ第3回は、飼料畜産中央研究所 養豚研究室です。養豚研究室では、飼料の開発や飼養方法の研究などを通して、養豚農家の経営に貢献する事を目指しています。


飼料畜産中央研究所 養豚研究室 養豚農家の課題に応えられる研究目指す

養豚研究室の研究員

 養豚農家を取り巻く環境は、昔と比べれば大きく変化しました。例えば国による窒素の排出規制強化など、環境問題への配慮がより厳しく求められるようになっています。人手不足が続く中で、いかに省力化を図っていくかも課題です。また育種改良で母豚の生産能力や肉豚の発育能力が向上する中で、その能力をより効果的に引き出すための飼料の開発や、飼養方法の確立も大切なテーマです。

子豚の成長段階に合わせた最適な人工乳の研究開発へ

 中でも長年研究室が力を注いできたのが、子豚向けの代用乳・人工乳の開発です。

 母豚の生産能力の向上によって、一度の出産で生まれる子豚数が増えました。そこで研究室では、これをサポートする代用乳の開発に取り組んでいます。また、長年にわたり力を注いできたのが哺乳期子豚用の人工乳の開発です。食べ盛りの子豚が必要とする栄養レベルを詳しく検証し、その成長段階に最も適したレシピ(配合割合)を研究。人工乳のために、主に飼料米などの穀類を独自加工する事で栄養価値を高めた専用原料も開発しました。

 哺乳期は、豚の肥育の中でも一番大切な時期です。コストを抑えつつも、良質な餌を与えたいという生産者のニーズは高いので、これからも人工乳の研究には力を入れていきます。

養豚研究室で飼養する子豚
 
低タンパク設計により窒素排出量少ない飼料開発

 一方、国による窒素の排出規制強化への対応としては、窒素や糞尿の排出量を減らす「eフィード」の研究開発を進めてきました。

 窒素はタンパク質を構成する要素で、消化吸収できなかったものがふん尿として排せつされます。そこで「eフィード」では、配合飼料を加熱処理するとともに、消化を促す酵素が加えられています。また豚の成長を阻害しない範囲で、過剰にタンパク質を摂取しないように低タンパク飼料となっています。

 この「eフィード」が養豚研究室によって開発され、提案されたのは2000年。現在は、さらなる低タンパク化などによって、窒素の排出量を減らすための研究を継続しています。

 豚肉に関する研究では、各種飼料原料や設計内容が肉質に与える影響について、肉色、柔らかさやドリップ量などに着目して検証しています。中でも柔らかさについては、食味に与える影響が大きい事から特に注目しています。

 養豚研究室では、生産者の方が今直面している課題に応えていく事を一番大切にしながら、日々研究に取り組んでいます。

豚肉の色は色差計で測定するとともにカラーチャートにより肉眼でも評価する
 
次回は、飼料畜産中央研究所 笠間乳肉牛研究室を紹介する予定です。(来年2月頃掲載予定)
 
畜産事業の研究最前線2はこちらです。 
 

畜産事業の研究最前線 2

 

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