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広報・調査部

With/Afterコロナ時代の食と農

コロナ禍は食農業界にも大きな影響を与えました。今後の農産物流通はどのように変化するか? 識者・関係者に聞きます。

流通現場から見る今後の農畜産物流通

全農チーフオフィサー 戸井 和久 氏
①進む業態のボーダレス化

 

ターニングポイント

 2020年の3月は世界にとって一つのターニングポイントになることは間違いないでしょう。思えばちょうど9年前の2011年の3月も東日本大震災が起こり、日本にとっては一つのターニングポイントとなりました。その時も小売業としては放射性物質対応や復興支援など、変化に対応することが求められました。今回もあらゆる業態で変化に対応することが求められています。

変化の性質の違い

 東日本大震災の時は生活インフラが崩壊したので、被災地と非被災地の消費の動向を見れば必要なものが見えました。その後、地震を前提としたライフスタイルが消費者の中に根付いていき、保存食や簡便食品の商品開発が進んでいきました。

 一方、今回のコロナ禍では、生活インフラが整っている中で人の移動が制限され、自宅での巣ごもり消費となりました。家族全員が家にこもり出掛けないので、ラストワンマイルまたはゼロマイル内での生活者の選択肢により、消費動向が大きく変化しました。近くの食品スーパー、コンビニ、ドラックストア、宅配便の生協やオイシックス、ネット通販のアマゾンや楽天も選択肢の一つとなりました。ウィズコロナやアフターコロナもこの傾向は継続していくと思われます。

小売・流通業態のボーダレス化が進む

 ネットを含めたIT技術は今後、どの業態においても必須の技術となるでしょう。技術の無いところはあるところと手を組みます。ローソンとウーバーイーツが組んだり、今回店舗で販売できなかった外食店が出前館のようなプラットフォームを利用したりなど、既に動きは広がっています。農畜産物でいうと産直アプリも盛況です。今後、業態の垣根は一層曖昧になり、業態をクロスしたサービスも次々と出てくると考えられます。小売・流通業態のボーダレス化が進んでいくでしょう。

ラストワンマイルとストックポイント

 IT技術によって情報がリアルタイムになると、消費者(誰)がいつ、何を、どこで、なぜ、どのように欲しい、または購入したかが見えてきます。それに合わせたサプライチェーン、すなわちラストワンマイルとストックポイントの組み合わせが新たなビジネスモデルになっていきます。「小売店までただいかに効率よく、新鮮に供給するか」という考えから、「その先の消費者が望むときに望む形で、いかに情報を付加した商品を届けるか」という考えに変わらなければなりません。商品が最高な状態になっているのは売り場ではなく、消費者が使う瞬間なのです。

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