特集

ベンチャー留学で広がる可能性 グリーンエースでの挑戦と学び

2025.11.24
広報・調査部

全農の荻野 智洋さん 中村 慎之祐 代表取締役に聞く

 全農では2023年度から、ベンチャー留学「Next Stage」に取り組んでいます。これは、ベンチャー・スタートアップ企業での業務を通じて、全農グループの職場とは異なるスピード感やマネジメント手法を学び、帰任後にその経験を生かして各部署でさらに活躍してもらうことを目的とした制度です。今年4月から、2018年設立の(株)グリーンエースに留学している荻野智洋さんと、同社の中村慎之祐代表取締役にインタビューしました。グリーンエースは2020年にJAアクセラレーター第2期にも参加した企業です。

 ※JAアクセラレーターとは、JAグループの持つ幅広いネットワークとリソースを用いてスタートアップの事業成長を支援するプログラム


オフィスの東京農工大学
留学中の荻野さん

荻野智洋さんインタビュー

── ベンチャー留学に応募した理由は。

 入会以来、営農関連業務を中心に肥料・農薬の品目やスマート農業の推進業務などを担当してきましたが、「このままずっと同じ仕事を続けてよいのか」という漠然とした不安がありました。
 これまでの仕事にはとてもやりがいを感じており、今後も続けたいという思いはある一方で、環境を変えて働いてみたいという気持ちもありました。そんな中、ベンチャー留学の募集を見て興味を持ち、応募しました。

── 現在どんな業務を担当していますか。

 商品開発から原料の買い付け、販売まで、一連の業務を担当しています。野菜を粉砕して原料にするのですが、品目が増える中で条件に合わない野菜も出てくるため、研究開発の方々とも協議しながら進めています。業務上、非常に多くの方々と接点があります。
 全農では、購買担当と推進担当が分かれていることが多いですが、グリーンエースでは、さまざまな関係者と同時並行で対応する必要があり、その点が大きな違いだと感じています。

── 印象に残ったことは何ですか。

 まず驚いたのはスピード感です。全農では提案にあたって資料作成や会議など、多くのプロセスが必要ですが、ここでは極端な話、中村さんに話をして納得してもらえれば、その場でOKが出ます。5~10分で決まることもあります。もちろん責任は伴いますが、やりたいことをすぐに行動に移せるのはすごいと感じました。また、スタートアップは個人プレーのイメージがありましたが、グリーンエースは情報を組織で必ずしっかり共有し、方向性を定めた上で個人がそれぞれの立場で頑張るという体制が整っています。毎日、短時間でも打ち合わせを行い、全員の目線をそろえる取り組みは非常に印象的です。

── どんな点に苦労しましたか。

 スピード感に慣れることに一番苦労しました。また、これまで使ったことのないコミュニケーションツールにも苦戦しました。商品開発をしたくてグリーンエースに来ましたが、「どんなコンセプトにするか」など、感度が足りず四苦八苦しています。全農でも「マーケットイン」を重視していますが、それを実践する難しさを痛感しています。

── 達成感を感じたエピソードについて教えてください。

 商品開発をして取引先に提案した際、「これいいね」と言っていただけたことがうれしかったです。また、ホウレンソウを原料として供給する必要があった際、全農の群馬県本部に相談してJAを紹介してもらい対応していただくことができました。JAグループの強さを実感しました。

── 全農に帰任後にこの経験をどう生かしたいですか。

 まずは、このような貴重な経験ができる制度があることを伝えたいです。これからの人たちにもぜひ挑戦してほしいと思います。
 また、ここで使っている業務ツールなどを全農でもカスタマイズして活用したいです。長期的には商品開発にも挑戦し、国産農畜産物の消費拡大に貢献していきたいです。

中村慎之祐 代表取締役 インタビュー

── 企業理念・ビジョンについて教えてください。

 「野菜の栄養を無駄にしない」をミッションに掲げています。食べられるのに未利用となっている野菜を、魅力的な商品に生まれ変わらせることを目指しています。

── 荻野さんにはどのような業務を担当してもらっていますか。

 商品の企画・開発・営業という一連の業務を担当してもらっています。プロジェクト単位で業務を進めており、現在は3つのプロジェクトを担ってもらっています。

グリーンエースの中村代表取締役
── 今後の展望・成長戦略について教えてください。

 大きく3点あります。1つ目はスーパーで未利用となっている野菜をアップサイクルし、再利用を進めていくこと。2つ目は生産者の未利用野菜を買い取り、パウダー化して商品化することです。3つ目は、6月に農水省の官民協議会でアップサイクル協議会を立ち上げました。大手企業約50社とワーキングチームを組み、環境整備や認証制度、法制化などを検討しています。アップサイクルを文化として根付かせることを目指し、共通のマーク作成なども進めていきます。

グリーンエースが製造した野菜粉末
野菜粉末を利用したお菓子
グリーンエースのアップサイクルモデル
── 全農と連携した経緯について教えてください。

 大きく2点あります。1点目は、創業メンバー中心で活動してきたため、他の企業の方と働く機会が少なく、大企業の経験者と一緒に業務をしてみたかったことです。2点目は、野菜の流通において、JAグループとの連携が事業にとって重要だと考えていたためです。

── 荻野さんにはどんなことを期待していますか。

 JAグループとの連携強化という目的は、荻野さんのおかげで達成に近づいています。荻野さんが企画・開発・営業した商品を店頭に並べ、多くの方に手に取っていただけるようになってほしいです。私たちも一緒に頑張っていきます。また、全農に戻った後も大いに活躍してほしいです。ロールモデルとなることで、私たちグリーンエースへの認知も広がると期待しています。

── 日本農業の未来についてどのようなビジョンを描いていますか。

 「もうかる農業」を目指していきたいです。栽培技術や品種、自動化などの進展により、負担が減る未来は想像できますが、農産物の価格を大きく上げるのは難しい。だからこそ、未利用で売れていないものを商品化することで売り上げを増やし、規格外品なども彩りや風味、栄養価を生かした商品に変えて価値を高めていきたいと考えています。


会社概要

会社名    (株)グリーンエース
本社所在地  999-6835 山形県酒田市蔵小路3番地
代表     中村 慎之祐
事業内容   農産物加工品の製造及び販売
       前(各)号に付帯関連する一切の事業

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