特集

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【海外拠点便り】

 全農は海外ネットワークを活用した国産農畜産物の輸出拡大と、肥料・飼料原料などの安定的確保に取り組んでいます。 今号ではカルガリー(カナダ)、 ロサンゼルス、ポートランド(アメリカ)、福建省(中国)の事業所を紹介します。


グレインズコネクトカナダオペレーションズ株式会社

カナダ内陸集荷施設から世界市場へ

一貫した物流体制を構築

 グレインズコネクトカナダオペレーションズ(株)(略称:GCC)は、2015年12月にカナダ産穀物の安定調達を目的に、全農グループと東豪州に基盤を持つグレインコープオペレーションズ(株)(旧農協組織)の合弁によって設立された会社で、本社はアルバータ州カルガリー市にあります。

 当社はカナダの穀倉地帯となるプレーリー(大平原)のサスカチュワン州に2カ所、アルバータ州に2カ所の計4カ所の穀物集荷施設(保管能力35000mt ×4カ所)を保有し、周辺農家から主に大麦、小麦、菜種、豆類を集荷し、自社専用貨車で西海岸のバンクーバー港に向けて出荷しています。バンクーバー港には、カナダ有数の穀物業者であるパリッシュアンドハインベッカー(株)との合弁によってフレーザーグレインターミナル(株)(略称:FGT)を所有しており、同施設を通じてカナダ内陸集荷施設から世界市場へアクセスする一貫した物流体制を構築しました。今年の冬からは保管施設も稼働予定で、より円滑な船積みによる安定供給を図ります。

 

GCC内陸集荷施設
FTG輸出船積施設

 
 
P&Z FINE FOODS LLC

コロナ禍転じて、急増する和牛需要に応える

 P&Z FINE FOODS LLCは、2017年11月、アメリカ・ロサンゼルスのパートナー企業との共同出資により、食肉加工販売、農畜産物および水産物の貿易・販売事業を目的に設立されました。

 主に、日本から来た船貨物、航空貨物の通関、配送手配、食肉加工を行っています。敷地内には、急速冷凍・通常冷凍・冷蔵の3つの温度帯の倉庫、食肉・水産加工施設を備え、卸売りから小売りまでさまざまなニーズに応えられるよう日々取り組んでいます。従業員数は、加工場4人、営業・事務3人と小さな事業所ですが、パートナー企業と連携し、量販店、ECサイト、業務卸への商品開発・提案・営業販売をしています。

 コロナ禍で一度は消滅しそうになった日本産農畜産物需要でしたが、牛肉においては、飲食店メインの流通から、ECサイトの台頭、量販店での取り扱いが急速に拡大しています。最近では、飲食店の通常再開に伴う需要純増により、ステーキ商材以外の商品開発、提案が急ぎ求められています。WAGYU=霜降り牛肉程度でしか認知されていなかった和牛は、新たなステージに突入しています。時流に乗り遅れないよう、どのように取り組み、役割を果たすべきか、日々問題意識を持ち、日本産農畜産物の取り扱い数量の拡大を目指します。

P&Z FINE FOODS LLC外観
 
 
全農グレイン株式会社ポートランド支店

北米西海岸から穀類や粗飼料を輸出

 全農グレイン(株)ポートランド支店は、飼料原料(穀類など)および粗飼料(牧草など)各種品目の購買業務、コンテナフォワーディング業務、輸出手続き・決済業務などを行う目的で2005年、オレゴン州に設立されました。全農からの出向者2人に加え、現地採用者5人の7人体制で業務に当たっています。子会社である全農ヘイ(株)、関連会社であるCZL(株)の取り扱い分を含めると粗飼料は年間約30万t、麦類約100万tを北米西海岸から輸出しており、日本向け原料供給網の米国拠点として安全で安心な飼料・食糧原料の供給に貢献しています。

 今年は干ばつの影響により牧草価格が高騰し歴史的高値となっています。また、新型コロナによる労働力不足や米国内陸でのコンテナ滞留などの影響から物流は混乱しており、クリスマス商戦に向けコンテナの物量はさらに増加するため、しばらくは厳しい状況が継続する見込みです。

 麦類は、北米一部地域での記録的な熱波、干ばつの影響を受け、生産量が大きく減少しています。一部銘柄は例年の品質規格では供給できないことから、品質規格の変更を余儀なくされている状況です。2021年の世界の小麦生産量は需要量を下回り、価格は上昇しています。現在、米国各地で翌年収穫される冬小麦の作付けが行われており、今後の安定供給のためにも作付け面積が減少しないことが期待されています。

日本に輸出される牧草商品
黄金色に染まるオレゴン州の小麦畑

 
 
瓮福紫金化工股份有限公司

高品質リン安の生産と技術の横展開による安定供給の強化

 瓮福紫金化工股份(おうふくしきんかこうこふん)有限公司は全農が30年近くリン鉱石を調達してきた貴州省の山元「瓮福集団」、地元福建省の金銅の精錬大手「紫金銅業」、そして全農が株主となっている合弁企業で、設立は2010年、全農の出資参画は2012年です。瓮福がリン鉱石、紫金が硫酸を供給して、工業用リン酸やリン酸肥料を生産しています。全農は、日本の厳格な要求を満たす高品質リン酸肥料を安定調達するため、これまで品質技術やマーケット情報を当社と共有し、安定した高い技術をともに確立してきました。

 最近では、当社の高い技術を瓮福グループの別工場へも横展開し、高品質リン酸肥料の調達先を多元化することによる安定供給の強化、山元との関係強化に取り組んでいます。当社エンジニアとともに展開先工場に出張し、製造時の留意点や品質の評価法、日本での品質フィードバックについて打ち合わせし、高品質の安定確保を図っています。また、中国で環境対策がますます厳格化している情勢の中、リン酸工場では副産物の石こう処理が主な課題の一つです。当社グループは早くから建材用途への開発を進め、副産物の再活用に注力していることも強みです。

瓮福紫金化工股份有限公司
当社エンジニアとともに行われる打ち合わせ

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