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広報・調査部

緊急連載 反グローバリズム・反新自由主義の潮流(3)

種子法廃止が招く農業・食の安全の崩壊

地域のネットワークで対抗を

 昨年4月に種子法が廃止され、各方面から懸念の声があがっています。6月18日、NPO法人「良い食材を伝える会」が東京都内で開いた講演会で、東京大学の鈴木宣弘教授が種子法廃止について解説されましたので、紹介します。


 「種子法」廃止は、規制緩和の流れの中でのとどめです。グローバル種子企業が目指すのは、世界中の種を自分のものにし、買わないと生産も消費もできないようにすることです。邪魔になったのが日本の「種子法」。国が金を出していい品種を作り、安く県が農家に提供し国民の生活を支えていました。即刻やめなさいと、議論もほとんどしないまま国会を通しました。大きな理由は、民間活力の最大限の活用です。農業資材の価格も下がるというのが名目でした。

米国の言いなり 日本を狙い撃ち

 しかし、安くいいものを提供するために「種子法」があり、やめれば必ず種の値段は上がります。今民間で流通している種の価格は、県の奨励品種の10倍もします。遺伝子組み換えではないと言われていますが、なぜか超多収米で、農薬をかけてもびくともしない。ほとんど遺伝子組み換えじゃないかと怪しいのですけど、これを広げるには「種子法」があってはいけないのですよ。

 それだけでなく国と県が開発した素晴らしい種は、全部民間種子会社がもらうということになっています。新しく作った「農業競争力強化支援法」の8条の4項に「今まで国と県が開発した種は民間種子会社に差し出しなさい」という条文を入れたのです。種は買わなきゃいかんものにし、自家採取を禁止しました。

 中南米の各国で、いわゆる「モンサント法」という一連の法律で全く同じことをやられてきました。インドもです。中南米の国々やインドは猛反発して、モンサントの特許を無効とか、モンサント排除という形で排斥し始めました。そこで日本だけは何でも言うことを聞くと、徹底的にやっているのです。

 もし独占的な市場シェアを持つ遺伝子組み換え種子によって人体に何らかの影響が出ても、その対処法や薬剤をセットで開発しておけば同じグループの製薬会社のもうけにつながります。安易にこうした流れを受け入れる政治の判断が今まさに問われているのです。

ゲノム編集も早々と野放しに

 もう一つ加わったのがゲノム編集です。ただ切り取るだけの部分は組み替えてもいないのだから野放しにしろと米国から言われ、早々と野放しにすることを決めました。消費者庁だけがちょっと抵抗していますが、たぶん抵抗できません。なので表示もできません。われわれは病気になっても、何で病気になったのかさえ分からないというところまで追い込まれつつあると思います。食べ物が安くなったと喜んでいると、遺伝子組み換え、添加物など、それだけでもリスク満載で、どこが安いのでしょうか。

 「種子法」の廃止も含め、地域、地域で私たちはいかがわしい物を受け入れないようなネットワークを作ればいいわけじゃないですか。安全・安心な物を作ってくださっている皆さんはここにいると。その人たちのおかげで命が守られているのだから、われわれは一心同体であると。そういう形で支え合う構造ができれば、いかがわしい物も排除できますよね。皆さんがリーダーとして自分たちの命を守る。命の安全保障のために、今、不可欠になっていると思います。【おわり】

特定のグローバル種子企業への「便宜供与」の7連発

①種子法廃止 ②種の譲渡 ③種の自家採取の禁止 ④non-GM表示の実質禁止 ⑤全農の株式会社化 ⑥グリホサートの残留基準値の大幅緩和 ⑦ゲノム編集を野放しにする方針

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