「ニッポンエールプロジェクト」特別座談会 全農と企業の共創が広げる“産地応援の輪”
「生産振興」「消費拡大」「商品開発」 それぞれの想い
全農と企業が商品を通じて産地を応援していく「ニッポンエールプロジェクト」。今回は数ある参画企業の中から3社のキーパーソンと、全農の取り組みを牽引(けんいん)する戸井和久チーフオフィサーによる座談会をお届けします。

【出席者】
- 協同乳業株式会社取締役 事業開発部・商品開発部担当 村上 大輔氏
- 株式会社不二家取締役副社長 洋菓子事業本部担当・菓子事業本部担当・購買担当 瓜生 徹氏
- 株式会社伊藤園 取締役専務執行役員 総合企画部 グループ経営推進部 サプライチェーン戦略部担当兼特命担当 神谷 茂氏
- JA全農チーフオフィサー 戸井 和久氏


戸井和久JA全農チーフオフィサー 「ニッポンエール」は2019年から全農が展開する商品ブランドです。各地の特色ある農畜産物を使った加工品を手がけながら、21年には国産の食べものと産地を応援する活動を加速させるため「ニッポンエールプロジェクト」を始動し、23年に協議会を設立しました。協議会には三つのミッションがあります。
一つ目は「生産振興」で、持続可能な仕組みで原料の安定供給を支えること。二つ目は「消費拡大」で、国産農畜産物の需要拡大や認知度向上に取り組むこと。三つ目は「商品開発」で、付加価値の高い商品を開発し、産地の想(おも)いを伝えています。
村上大輔 協同乳業(株)取締役 乳を事業の基盤とする当社は、「農協果汁」の販売に伴う果汁原料に関連した産地との取り組みをきっかけに参画しました。商品を通じ産地の想いを届けられる意義を強く感じています。原料や商品開発だけでなく、生産や品質保証、営業に至るまで、部署を越えたメンバーが力を合わせることで、会社全体に共感や意識の共有が広がりました。このプロジェクトを通じ、メンバーが一体となったものづくりの良い流れができてきたと感じています。


瓜生 徹 (株)不二家取締役副社長 食の安全・安心を重視する消費者の方が増えている中、「ニッポンエール」の取り組みは、当社がお菓子やケーキを通じてその価値をお伝えする非常に良い機会になると考え、参画しました。それに加えて、商品を見るとき「どんな味なんだろう?」「どんな素材だろう?」と興味を持つ方も多くなっています。共同開発を通じ、思わず手に取ってみたくなる魅力的な商品が可能になったと感じており、その背景には「ニッポンエール」の安心感があると思います。
神谷 茂 (株)伊藤園取締役専務執行役員 当社はお茶の会社ですが、実は「農」とも深く関わっており、国産農作物をもっと広め、地域の果実を商品化し貢献したいと考えていました。最初に取り組んだのは21年に手がけた宮崎県産の「日向夏」で、食べ方を知らない社員も多く「どう食べるの?」という声が上がりました。全国の拠点に生果を配布し全員で試食したところ「こんなにおいしい果物があるのか」と気づき、販売への意気込みが高まりました。自社商品を通じ社会貢献できる喜びが強いやりがいにつながっています。


戸井チーフオフィサー 全国的にまだ知られていない農産物も多くあります。例えば47都道府県の素材を使ったグミには、知られていない果実も多いです。商品を通じ「こんな果物があるんだ」と知っていただき、「旬の果実も味わってみたい」と思ってもらえれば何よりです。
神谷専務 当社には「自然・健康・安全・おいしい」の四つがそろわなければ商品化しない考えがありますが、「ニッポンエール」の商品はそのすべてを満たしています。さらに、「ニッポンエール」という響きがいいですよね。パッケージに掲載された「全国の産地を応援する」という言葉は、今の消費者の価値観にも合っていると思います。これまでは果実が中心でしたが、今後は酪農や穀物にも広がっていけばと考えています。
瓜生副社長 今は外国人観光客も多く、日本の文化を楽しむ方が増えています。今回の飲料や乳製品、お菓子を通じ、日本の食の魅力をPRできる商品展開を進めたいですね。北海道の牛乳が米国で注目される動きもありますし、今後は作り手の個人名まで出して発信できる取り組みも面白いと思います。より多くの方に喜んでいただけるよう「ニッポンエール」の輪を広げていきたいです。
村上取締役 社会や環境が大きく変化する中、産地の方々は課題を抱えながら取り組まれておりますが、その中にあっても、変わらずに継続されている丁寧な仕事ぶりが品質に表れるのが日本の農産物の特徴だと思います。私たちも工夫を重ね、その良さを生かして消費者の皆さまにしっかり届けることが課題解決の一助になると信じています。
戸井チーフオフィサー 実際に商品を食べて応援していただくことが、環境保全や原風景の維持、地域社会への貢献にもつながっていく。そういう共通認識を育んでいくためにも、産地の想いが伝わる付加価値の高い商品を共創していきたいと思います。すべての視点がまさに「エールをおくる」というプロジェクトの根幹であり、私たちの原動力になっています。