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広報・調査部

AgVenture Lab発 スタートアップインタビュー

宇宙技術ハイパースペクトルを農業分野へ応用


Milk.(株)代表取締役の中矢大輝さん

 アグベンチャーラボ主催「JAアクセラレーター第7期」に採択されたMilk.(株)は宇宙技術ハイパースペクトルを応用したがん診断、食品鮮度測定、そのほか鉱物探査を実施するディープテックスタートアップです。代表取締役の中矢大輝さんに話を聞きました。
 ※JAアクセラレーターとは、JAグループの持つ幅広いネットワークとリソースを用いてスタートアップの事業成長を支援するプログラム


Milk.の事業とその特徴について教えてください。

 Milk.は、「ハイパースペクトルカメラ」を用いたAIシステム事業を行っています。「ハイパースペクトルカメラ」とは、従来のカメラでは捉えきれない、より多くの光の色の情報を取得できるカメラです。これにより、物質の成分分析や異物検出など、従来のカメラでは難しかった判別や検査が可能になります。「ハイパースペクトルカメラ」は、一般的なカメラが光の三原色を捉えるのに対して、最大141種類の光の色情報を取得できます。

 この微細な光の色情報を活用することで、細胞レベルでの識別が可能となります。その解析技術とデータ分析情報を提供することで、メディカル領域(がん診断)、フード領域(食品鮮度測定)、エネルギーフィールド(鉱物探査)の三つの事業を推進しています。

ハイパースペクトルカメラ
事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

 「ハイパースペクトル技術」の存在を知ったことが、すべての始まりでした。私がアメリカの大学で物理学を専攻していたとき、祖母から「ハイパースペクトルカメラ」の開発者である佐鳥新教授のドキュメンタリーを紹介されました。ドキュメンタリーをきっかけに「ハイパースペクトル技術」に興味を持ち衝撃を受け急きょアメリカから帰国し、佐鳥教授の下で研究を行うことを決意しました。

 佐鳥教授の下では、「ハイパースペクトルカメラ」のハード面ではなく、AIを活用した「ハイパースペクトル技術」のソフト面からの分析に関する研究を行っていました。その過程で特許を取得することができました。研究をさらに進めるために、株式会社として事業化することで企業や大学からの協力を得やすくなると考え、事業化することにしました。

事業を展開する中で感じる日本農業の課題とそれに対するMilk.のアプローチを教えてください。

 日本におけるフードロスに課題を感じています。食べられるものが捨てられているという実態は「もったいない」精神を持つ日本人にとって、とても悲しいことだと感じています。

 当社では、ハイパースペクトル技術を生かして開発した新しいデバイス「IRODORI(イロドリ)」(以下、イロドリ)を活用し、農業・食品分野での実用化を目指しています。イロドリは鮮度測定を行うハンディタイプのハイパースペクトルカメラで、食品に特化した18原色で食品の細胞を撮影し、鮮度を測定します。食品の色素分子変化のパターンに当てはめることで、鮮度の劣化を迅速に見極めることが可能となります。

 現時点で品質に何ら問題がなくても鮮度が長く保てない=長期保管に耐えられないと判断された食品は早めに流通させることで廃棄を防ぎ、一方で長く鮮度が保てると判断された食品については消費期限を延ばすなどの対応が可能となり、結果として食品ロスの低減につなげることができます。また、商品を出荷する際に腐敗しやすいものを選別することで、品質事故を減らし返品・廃棄によるコストを低減させることができます。さらに、海外向けに輸出する食品については、国内で流通する食品より輸送時間が長くなるため、より鮮度測定技術を活用できると考えています。

 このように、食品の鮮度を「見える化」することで、まだ食べられる食品が無駄に廃棄されるのを防ぐ仕組みを社会に実装することを目指しています。

ハンディタイプの分光計測システム「IRODORI(イロドリ)」
青果物でのイロドリ使用の様子
青果物をイロドリで撮影した画像
JAアクセラレーター参画企業として今後JAグループと取り組んでいきたいことを教えてください。

 JAグループの皆さんには、実際に「ハイパースペクトルカメラ」を使用していただき、データの収集とAIの精度向上に共に取り組んでいただきたいと考えています。「ハイパースペクトルカメラ」で撮影した画像だけでは、その画像が何かをコンピューターは理解できません。画像に答えを付けることで初めて撮影した画像が価値を持ちます。そのため、データを共に収集し、画像に答えを付ける人が必要です。

 食品の鮮度測定や土壌診断などの農業分野での活用においては、画像に答えを付けてくれる農業関係者や流通・食品関係者が必要となります。答えを付けることでAIの精度を向上させ、利用者への提供サービスの向上につなげることができます。

 「イロドリ」に関しては、果実や葉物野菜、精肉の判定を得意としているため、これらの診断に興味がある方に実際に使用していただきたいと考えています。また、土壌診断においては、水分量の計測、窒素含有量の測定、土壌の種類の区別について実績があり、さらなるデータ収集により活用の幅を広げていきたいと考えています。

 また、装置については貸し出しも可能ですので、実際に使用していただき、データの収集に役立てていただきたいと考えています。

土壌診断で「ハイパースペクトルカメラ」を使用している様子

Milk.(株)のHPはこちら 

Milk.がつくるInvisible World https://invisibleworld.co.jp

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