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耕種総合対策部

全農×KDDI×KDDIスマートドローン

自律飛行型ドローンを活用した事業検討で基本合意 遠隔防除受託サービス実証に着手へ

 全農はKDDI株式会社、KDDIスマートドローン株式会社(以下KDDIスマートドローン)と、自律飛行型ドローンを活用した事業検討について基本合意書を6月24日に締結しました。自律飛行型ドローンを活用した農業分野におけるサービスを組合員や農作業受託事業者などに提供するため、遠隔防除受託サービス実証に着手します。


基本合意書を締結した(左から)KDDIの高木秀悟執行役員、全農の日比健常務理事、KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長
取り組み内容を説明する千葉県本部職員

 日本の農業は、少子高齢化や担い手不足により労働力の確保が困難となっています。農業従事者は、22年の116万人から20年後には30万人まで減少する見込みで、農作業の効率化と自動化の必要性が高まっています。解決手段の一つとしてドローンの活用が期待されていますが、ドローンを購入し、費用を掛けて操作講習を修了する必要があり、利用のハードルが高いのが現状です。また、作業面でも操作者1人がドローンでできる面積には限界があります。 [*出典:農林水産省ホームページ]

測量や農薬散布など 27年度までに事業化

 今回は、農業の労働人口減少や高齢化に伴う課題に対し、スマート農業を通じて持続可能な解決策を提供することを目的としています。遠隔防除受託サービス実証では広く連携パートナーを募り、複数のドローンメーカーの遠隔運航管理を確立し、農業分野における標準規格とするために、27年度までの事業化を目指します。

 具体的には複数のドローンを遠隔操作で運航し、測量や農薬散布などを行います。1人のオペレーターが高い再現性を確保した自律飛行システムでドローンを管理することにより、機体の安定性を確保し、農薬散布作業の均一化を実現。こうした特徴を生かし、果樹など従来は樹形が立体的で、ドローン防除が難しいとされている品目についても拡大を図ります。また、機体操縦だけではなく飛行申請や上空電波(4G LTE)の確保など、ドローンの運航に必要なサービスを一体的に提供します。

 このことにより、組合員や農作業受託事業者が負う一連の労力やコストを軽減し、農業の持続的な発展に貢献します。

 また、スターリンク(Starlink)衛星通信との連携による電波不感地帯での安定したサービス提供なども視野に、スマート農業技術全般について事業検討を進めていきます。 

千葉県本部でドローン実演会を実施

 実証着手にあたり、千葉県成田市にある千葉県本部営農技術センターで7月11日に、スマート農業現地研修(ドローン実演会)を開催し、全農職員約40人が参加しました。増加しているドローンの農業利用について、先進県である千葉県本部のドローンプロフェッショナルサービス株式会社(以下DPS社)を作業委託先とした、目視内飛行による実演を行いました。その後、KDDIスマートドローンによる目視外飛行を行い、最新技術を共有しました。

 DPS社はドローンを活用した農薬・肥料散布事業、ドローンスクール運営などを行っている千葉県内の法人で、千葉県本部と営農管理システム「Z-GIS」を活用し、効率的に共同防除をしています。

 JAに対象圃場(ほじょう)を「Z-GIS」で登録してもらい、圃場情報を千葉県本部、DPS社で共有。「Z-GIS」上で事前情報の共有や、当日の進捗(しんちょく)を都度確認することができるので、千葉県本部やJAが散布に立ち会わなくてもDPS社が農薬散布できる体制を構築しています。

 最近は危険を伴う高所作業であることや、作業中は高温時期でもハウスを締め切る必要があるため、ハウスの遮熱剤塗布のドローン散布の需要が増えています。

 30aのハウス塗布作業に7〜8時間程度かかるところを、ドローンを活用することにより約4時間程度で完了できることを確認しています。

 今後も高温対策や危険が伴う高所作業の回避のため、ドローンの活用方法が考えられています。ドローン飛行の実演当日は、操縦飛行(飛行レベル1)とオートパイロット(同2)のデモンストレーションが行われました。オートパイロットは時速18kmで散布しますが、操縦では時速20km以上でも散布可能で、作業時間が異なりました。短時間で散布でき、大幅な作業時間短縮になることを参加者間で共有できました。

ドローンの2台同時飛行や遠隔操縦を実施

 KDDIスマートドローンは、空撮などを行うセンシング用ドローン(SkydioX10)によって次の実演を行いました。(1)オペレーター1人によるドローン2台の目視外同時飛行(2)成田から東京都板橋区にあるドローンの遠隔操縦(3)自動車を障害物と見立てた自動回避の実演。      

 ドローンにはセンシングカメラが搭載されており、上空から撮影した圃場をリアルタイムでモニターから見ることができるので、遠隔地でもドローンポートからの離陸や飛行、ドローンポートへの着陸が円滑に行えることが確認できました。30m上空から撮影したサツマイモも、はっきりと見ることができました。また、センシングカメラに加え、360度の様子を確認できるカメラも付いており、ドローンが障害物に向かって飛行していても自動で回避するため安全性を確認できました。

 実演を受け、農業用ドローンの活用について活発な意見交換が行われ、今後のスマート農業の可能性を大いに感じる研修となりました。

KDDIスマートドローンによる2台同時飛行実演
KDDIスマートドローンによる遠隔飛行実演
(画面左は板橋区のドローンのセンシング映像)
KDDIスマートドローンの実演中のモニターの様子(サツマイモ)

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