子どもも大人も一緒にみんなでにぎわう憩いの場
生産者と消費者、子どもも大人も一緒になって田んぼに入り、生きものを調べる「田んぼの生きもの調査」。「食」と「農」の大切さや、農業の多面的機能、生物多様性、環境保全に果たす役割を知ってもらい、水田の生態系から稲の成長や農家の仕事への理解を深めてもらおうと、全農が2008年から力を注いでいます。7月に開催された様子を農ジャーナリストの小谷あゆみさんが報告します。

全農が主催する「田んぼの生きもの調査~親子で楽しむ生きものとの出会い」と題したイベントが7月4日、神奈川県伊勢原市でありました。参加したのは、県内外の親子16組、44人。開会式では、全農広報SR課の青木秀樹課長(当時)が、「全農では2025年度までに約900回、田んぼの生きもの調査を実施し、4万2000人に参加していただきました。今日の田んぼでは、生きものとともに育つ稲や、農家さんについても是非知ってください」とあいさつしました。
会場となったのは、市内の米農家、内藤正行さんの田んぼです。神奈川県のブランド米「はるみ」を中心に4haで稲作を営む内藤さんは、十数年前から全農の活動に協力し、夏と秋の2回、イベントの受け入れをしています。
16組の親子が畔に一列に並びました。初めて田んぼに入る子も多く、最初は恐る恐るですが、足を踏み入れた途端、あちこちから歓声が上がります。


26種類の生きもの発見 食のリテラシー育む
筆者もズボンをまくり上げて田んぼの中へ。夏の田んぼのぬかるみは普段の生活では味わえないさわやかな心地よさがあります。水面を見ると、すばやく動く2、3mmの小さな黒い虫が泳いでいます。「いたいた! 速い速い」と声を上げると、詳しい男の子が「ガムシの仲間~!」と教えてくれました。
にぎわう田んぼを見て農家の内藤さんは、「田んぼって憩いの場なんだよね。農家も昔はたくさんいてね、3時だからお茶飲もうよって声をかけあってたんだよ」と話します。生きもののためにもできるだけ自然なものを使いたいと、近隣の畜産農家の堆肥で土づくりをしています。
30分ほどの採集で集まったのは、イトミミズ、ユスリカ、チビゲンゴロウ、ニホンアマガエル、アメンボ、ハシリグモのほか、空に舞うアカトンボ、ヒバリ、シラサギなど26種類。ホワイトボードに書き出して解説をしたのは、講師の高知県梼原町で循環型農業を営み、農と生きもの研究所を主宰する谷川徹さんと、生きもの調査インストラクターの原覚俊さんです。子どもらにとって大切なのは、希少生物の多寡や、名前の同定よりも、田んぼの生態系を五感で感じ、小さな命の躍動を手に取って体感することにあるようです。そうした経験は忘れられない記憶となり、農業への理解や、食のリテラシーを育みます。

生きものが米をつくる 食べる時に思い出して
参加した子どもたちのアンケートの一部を抜粋します。
「生きものがいろいろいて楽しかった」「はじめて田んぼにはいってきもちよかった」「大きいおたまじゃくしと卵を見つけた」「土がぬめっていておもしろかった」「スンゴイたのしかった」。読んでいるだけで、こちらまでうれしくなります。また、大人のアンケートでは、「農家の方の思いを直接聞けてよかった。田んぼに目を向けたことで、子どもは他の食べ物がどう作られているか、興味を持ったようです」「日本の農業のためにこうしたイベントは貴重」「生きものが米をつくるという考えにハッとしました。子どもたちが食べ物を食べる時に思い出してくれると良いと思います」
生きものや人でにぎわう田んぼは、農家はもちろん、農業界全員の喜びでもあります。今日の経験をした子どもたちが大人になる10年後には、田んぼはみんなが集まる憩いの場だと定義されていることを祈らずにはいられません。百聞は一見に如かず。次回は10月に開催する予定だそうです。








