[インタビュー]全農経営管理委員 荒川隆氏 新著『食料安全保障と農政改革』を発刊 農政の本質を問う

あらかわ・たかし 1959年宮城県生まれ。82年農林水産省に入省、食糧部長、畜産部長、官房長、農村振興局長などを歴任し、2018年退官。20年3月からJA全農経営管理委員、21年6月から一般財団法人食品産業センター理事長。日本農業新聞のコラム「農政岡目八目」(月1回、第3水曜日掲載)に寄稿している。
大転換期を迎えた日本農業と農政を読み解いた書籍『食料安全保障と農政改革』が4月25日、日本農業新聞より発刊されました。著者は農水省職員として、深く農政に関わってきた荒川隆氏。同紙の人気コラム「農政岡目八目」を、直近の情勢を加えて分かりやすくまとめています。発刊に込めた思いをうかがいました。
コラム執筆の思いを教えてください。
農水省退職後にご縁があり、同紙に農政をテーマにした8回連載を執筆しました。想像以上に反響があって、2021年から長期の連載「農政岡目八目」になりました。公務員は、時の政策運営にいろいろな思いを抱いているものですが、立場上、表立って社会に発信はできません。一方、農業や食品事業などの関係者の方々でも、農政への誤解や思い込みなどを持っている人が少なくありません。そこで、公務員が対外的に発信できない思いの〝代弁者〟となり、正確な情報を伝えようと取り組んできました。本著から、政策立案の事情や公務員諸兄の思いをご理解いただけたら大変うれしいですね。
農水省OBの農政解読
「まともな農水省OBの農政解読」という副題が印象的です。
同省OBや農政の事情通と呼ばれる方たちの発信とは、一線を画していることを強調しました。農業、食料への国民の関心は高まっているものの、〝まともな〟情報が伝わっているとは言い難いです。第2章冒頭のコラム「なぜ日本農業は、いつまでも課題山積なのか」は、多くの方が抱いている疑問を解決する一助になればと思います。本著の随所に挿入したゴシック体の部分は、執筆当時を「どう振り返るか」という視点で新たに書き下ろしたので、新聞連載を読んだ方もぜひ、手にとってほしいと思います。食料・農業・農村基本法の改正など大きな農政の動きも解説しています。
直接支払いについても言及していますね。
国内農業存続には、輸出国との圧倒的な条件格差を是正するため、国境措置や直接支払いが必要です。昨今、米の価格高騰について一部のメディアは視聴率稼ぎのような報道を繰り返していますが、結果として直接支払いについて国民的な議論ができるようになったことは、唯一良かった点かもしれません。
自信と誇りを持って
JAグループへのメッセージをお願いします。
1点目は「油断するな」と伝えたいです。JAグループは自己改革に取り組み、社会から評価を受けていますが、いつ風向きが変わるか分かりません。これからも国民に対して、JAを正しく理解してもらえるような取り組みを続けていくことが大事です。
2点目は「胸を張ってほしい」ということ。全農経営管理委員として、職員の皆さんが本当に頑張っているということを強く感じます。JAは地域に根差した組織。農業はもちろん、地域社会を支える担い手であるということに自信と誇りをもって、頑張っていただきたいです。

読者プレゼント
新著『食料安全保障と農政改革』の荒川氏サイン本を25名様にプレゼントします。
応募先 ご応募はこちらから https://form.ja-group.or.jp/agrinewskaihatsu/weekly_present
締め切り 2025年7月14日(月)23時59分
※応募者多数の場合は抽選で当選者を決定いたします。また、当選の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。