【AgVenture Lab発 スタートアップインタビュー】AI・IoTを活用し現場の課題を可視化する防虫・防鼠対策

※JAアクセラレーターとは、JAグループの持つ幅広いネットワークとリソースを用いてスタートアップの事業成長を支援するプログラム

─FutuRocket(株)の事業とその特徴について教えてください。
FutuRocket(株)は、AI・IoTを活用したデバイスを開発するスタートアップです。シンプルなAIカメラ「ManaCam」シリーズをはじめ、赤外線センサーによる害獣・害虫検知AIデバイスなど、現場の課題を可視化し、農業や地域産業のDXを支援するプロダクトを展開しています。AIカメラの設置・撮影からデータ分析まで一貫して担っています。
他社と比較して、シンプルかつ安価に商品を提供しており、1台当たり1万円から数万円程度で販売しています。そのため、複数箇所にカメラを設置することが可能となり、より多くのデータを収集できます。

─現在の事業を始めようと思ったきっかけは何ですか。
元々、AIカメラを使って飲食店などの利用状況を分析する事業を行っていました。その製品を使用していたお客さまから、「人ではなく、ネズミやゴキブリを同様に検知し、防虫・防鼠(ぼうそ)に生かせるAIデバイスを開発できないか」との相談をいただいたことがきっかけです。
また元々、大手防虫・防鼠業者と取引をしており、その業者の研究所で飼育しているゴキブリ、ネズミを光学カメラで撮影し、データを収集しました。そのデータを元にAIのデータセットを作成しました。
研究所は明るい場所だったため、ゴキブリ、ネズミを光学カメラで検知しやすかったのですが、実際の現場は暗所が多くゴキブリ、ネズミが保護色を持つため、光学カメラでは検知しにくいという課題がありました。そのタイミングで三菱電機さんの赤外線センサーを活用した共創プログラムに採択され、その赤外線センサーを用いてゴキブリ、ネズミを検知する取り組みもスタートしました。
─JAアクセラレーターの期間に行ったこととその成果を教えてください。
JAグループ鶏卵農場の鶏舎で、当社のプロトタイプによる赤外線画像を5万枚以上撮影し、ネズミの検知を検証しました。 その結果、ネズミの検出および、どの時間帯にネズミが活発に活動しているのかを特定することができました。今回収集できたデータの分析を通じて、より効果的な防鼠対策への活用が期待されます。
畜産現場におけるネズミによる被害は、飼料の消費だけでなく、伝染病の媒介も懸念されています。このような被害を防ぐためにも、効果的な防鼠対策が必要です。



─今後の展望について(JAグループと取り組みたいことなど)お聞かせください。
今後は、農業、食、環境衛生に関わる現場で、ネズミ検知AIデバイスの導入を広げていきたいと考えています。また、イネカメムシやハダニなどの小型害虫および熊、イノシシ、鹿といった大型動物の検知にも応用範囲を拡大し、農業の安全性と生産環境の維持に貢献していきたいと考えています。特に、現在問題となっている熊の被害については、出没頻度や場所の特定により、AIデバイスの活用が対策の一助となることを目指しています。
AIを使用してデータを分析するためには、データの蓄積が必要です。現在、小型害虫や大型動物のデータはまだ不足しているため、JAグループと共にデータの収集および活用を進めていきたいと考えています。
さらに、今後は屋外でのデータ収集において、ソーラーパネルで電力を賄うカメラや、SIMを活用して電波の届かない場所でも通信できるシステムの構築など、より屋外でも使いやすい機器の開発を目指しています。

マダニなど小さな害虫検知まで対象範囲を広げる予定
─日本の農業に対して感じている課題は何ですか。
日本の農業では、害獣・害虫の発生が収量や品質に直結する中で、早期発見やデータに基づく対策がまだ十分に進んでいない点が課題と感じています。
農業の現場では、人手不足の中でDXや自動化の必要性が高まっていますが、機器が高価で複雑なことから導入が進みにくい現状があります。当社は、安価でシンプルに設置できるAIデバイスを通じて、誰でも使える形でテクノロジーを現場に届け、日常の見回りや衛生管理を支援していきたいと考えています。
FutuRocket(株)のHPはこちら https://www.futurocket.co
JAアクセラレーター第7期インタビュー https://www.youtube.com/watch?v=G7YgE-IxKqM





