地域の強みを生かし持続可能な農業へ
課題への挑戦と全農グループの役割語る
農業を取り巻く環境が大きく変化する中、全農の都府県本部では、地域の実情に応じたさまざまな取り組みを展開しています。今回は、各地域が抱える課題や全農グループに求められる役割について、宮城県本部の都築裕一県本部長、兵庫県本部の堂本英之県本部長、大分県本部の江藤ひなたさん、広島県本部の辰本健太さん、岐阜県本部の小川玲奈さんにお話を伺いました。(取材日=5月22日。当時の役職で掲載しています)

各地の課題に向き合い生産基盤を支える
堂本 兵庫県は地域ごとの違いが非常に大きく、「日本の縮図」と呼ばれています。但馬、丹波、播磨、摂津、淡路と気候風土が異なり、山田錦、黒大豆、神戸ビーフなど全国的に知られる品目があります。その中で大きなテーマとなっているのが米づくりの維持です。
近年は集荷対策課を設け、複数年契約などを通じて生産者が安心して米を作れる提案を進めています。また、県と連携して高温耐性米「コ・ノ・ホ・シ」のPRにも取り組んでいます。さらに、キャベツやタマネギの産地では、大学や企業と連携しながら収穫期における労働力確保を支援する仕組みを広げています。
都築 宮城県本部でも、米の生産基盤をどう維持するかが大きなテーマです。農業従事者の減少や高齢化が進み、少数の担い手や法人がより多くの水田を担う中、育苗や田植えの負担が規模拡大の壁になっています。
そこで県本部では乾田直播の実証に取り組んでいます。水を張らない田んぼに直接種をまくことで、育苗や田植え作業を省くことができます。2024年産から3か年計画で県内8か所の実証を進めており、担い手不足に対応できる持続可能な営農環境づくりを目指しています。
小川 畜産分野でも生産基盤の維持が大きな課題です。私は岐阜県本部の飛騨牛繁殖研修センターで飛騨牛の繁殖に取り組んでいます。全国的に繁殖雌牛や子牛の減少が進む中、県内市場への子牛供給頭数を増やし、生産基盤を支えることが大きな目的です。
センターでは受精卵の2卵移植や県内種雄牛の活用に取り組むほか、国産粗飼料の活用や飼料形態の工夫によるコスト低減、子牛育成マニュアルの実証も進めています。生産者との意見交換を重ねながら、飛騨牛産地の将来を支える取り組みを続けています。
辰本 私は広島県本部で鶏卵の販売を担当しています。生産農家と一緒に「どのような卵をつくり、どう販売するか」を考えながら仕事をしています。
近年の大きな取り組みとして、新しいGPセンターが稼働しました。卵の洗浄、検査、計量、パック詰めを行う施設で、生産者やJA全農くみあい飼料、全農たまごなどが連携し、生産から販売までを一貫して強化しています。
また、鶏ふんを活用して生産した飼料用米を鶏の餌に利用する「こめたまご」にも取り組んでいます。耕種農家の水田維持と養鶏農家の資源循環を結びつける、全農グループならではの取り組みだと思います。
江藤 大分県では、地域ごとの営農をどう支えていくかという視点で仕事をしています。地域によって農業の姿が大きく異なりますが、高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加といった課題は共通しています。
私が所属する営農支援課では、TAC活動の支援や「NEサポシステム」「Z‐GIS」「ザルビオフィールドマネージャー」などスマート農業関連システムの普及に取り組んでいます。JA担当者とともに生産者の声を聞きながら、地域の実情に応じた支援を進めています。
生産と消費をつなぐ全農グループの役割
堂本 皆さんのお話を聞いていて、改めて全農グループの役割は生産者を支えることにあると感じました。米や園芸、畜産など分野は違っても生産現場の課題に向き合い、産地を維持するための取り組みを各地で進めています。
辰本 鶏卵でも、生産者だけではなく飼料事業や販売事業など、さまざまな事業がつながることで成り立っています。全農グループの強みは、生産から販売までをつなぎながら価値を高められるところだと思います。
小川 畜産でも、生産者だけで解決できない課題が増えています。だからこそ、生産技術や流通、販売まで含めて産地を支える役割が重要になっています。
都築 食料安全保障への関心が高まる中で、農畜産物を安定的に供給していくことも全農グループの大きな使命です。担い手不足や気候変動など課題が多い中でも、生産基盤を未来につないでいく責任があります。
江藤 営農支援やスマート農業の取り組みも、最終的には地域農業を持続させるためのものです。目立つ仕事ではありませんが、農業の基盤を支える重要な役割だと思っています。
これから全農グループに求められること
堂本 一方で、こうした取り組みが十分に伝わっていないという課題も感じています。私たちは単なる流通組織ではなく、生産基盤を維持し、農業を支えるためにさまざまな取り組みを行っています。そのことを、もっと分かりやすく伝えていく必要があります。
辰本 私も同感です。スーパーに並ぶ卵を見ただけでは、その背景は伝わりません。産直市では、「そんな取り組みをしているとは知らなかった」という声もありました。商品だけでなく、生産者の思いや地域とのつながりも伝えていくことが大切だと思います。
江藤 スマート農業も同じです。ドローンだけでなく、日々の営農を支える管理システムもあります。こうした取り組みを消費者にも知っていただくことで、農業への理解を深めてもらえるのではないかと思います。
都築 食料安全保障の重要性が高まる中で、なぜ生産振興や技術実証を進めているのかを社会全体に理解していただくことも重要です。広報誌だけでなく、動画やSNSなども活用しながら発信していく必要があります。
小川 畜産分野でも「全農は何をしているのか」と聞かれることがあります。全国の産地には誇れる取り組みがたくさんありますので、そうした現場の声をもっと発信していきたいですね。
堂本 農業を取り巻く環境が大きく変化する中で、生産者とともに産地を支え、消費者に安定して農畜産物を届けるという使命は変わりません。その価値や意義を社会に伝えていくことも、これからの全農グループに求められていることだと思います。






