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広報・調査部

【AgVenture Lab発 スタートアップ インタビュー】
高機能バイオ炭で高収量苗、人工土壌を製品化 株式会社TOWING 取締役最高執行責任者(COO) 木村俊介さん

 JAアクセラレーター第4期に採択された(株)TOWING(トーイング)は名古屋大学発のベンチャー企業で、脱炭素と有機転換の両立を目指し、高機能バイオ炭普及に向けた取り組みを展開しています。取締役COOの木村 俊介さんにお話を聞きました。


事業について教えてください。
取締役COOの木村俊介さん

 バイオ炭を微生物で高機能化した「高機能バイオ炭」の開発・販売を行っています。また、炭を農業に利用することは脱炭素につながるため、カーボンクレジットの代理発行・販売も手掛けています。

高機能バイオ炭とは?

 バイオ炭はもみ殻や果樹の剪定(せんてい)枝などを炭にしたものですが、高機能バイオ炭は有機肥料の分解を得意とする微生物をバイオ炭にすまわせることで、良質な土壌を短い期間でつくることができます。この高機能バイオ炭を利用した、「宙苗(そらなえ)」と「宙炭(そらたん)」という製品を提供しています。

 宙苗は高機能バイオ炭で育てた苗で、例えばキャベツであれば、従来の培土で育苗した苗と比較して1株当たりの重量が1.7倍、直径も1.2倍と大きく育つことが分かっています。トマトやピーマンなどの果菜類も収量が上がるという実証結果が出ています。

 宙炭は高機能バイオ炭を農業で使用できる形に製品化した人工土壌です。アクセラレーターで生産者のニーズを知り、開発しました。従来から炭は土壌改良剤として使われていますが、未熟土や水田転作地へまく場合、施用量を間違えると土壌がアルカリ性になりすぎて収量が落ちるなど、散布の難しい部分があります。高機能バイオ炭はほぼ中性なので、適切な土壌酸性度を保つことができます。また、化成肥料を使用していた農地で有機肥料を使えるようにするには3~5年ほどかけて土づくりしますが、宙炭を使うとわずか1カ月で有機肥料を分解できる土壌になります。知識や技術が必要だった有機肥料を容易に取り入れられるうえ収量は上がる、宙炭は軽く作業面でも楽といった特長があります。

「宙苗」の果菜類は従来の培土より大きく育つ
高機能バイオ炭を製品化した「宙炭」

 
JAと取り組みたいことは。

 現在、約30のJAとの宙炭利用、宙苗利用試験が決定し、今後も順次JAとの取り組みを増やしていきます。次は高機能バイオ炭の素(もと)となる炭を製造する部分でも連携できればと考えています。処理に困っているもみ殻や畜ふんなどを炭に加工してもらい、当社が全量買い取る。または、すでに炭を作っているが販売し切れていないという場合も買い取りすることを考えています。そしてその炭で作った宙炭をJAや全農を通じて地元の生産者に供給するなど、地域での資源循環を目指しています。

今後の展開について教えてください。

 現在、愛知や群馬、北海道など15の都道府県でJAや農業法人、行政と連携し、高機能バイオ炭の実証試験を基に、県内の栽培体系の転換や、炭化したもみ殻・畜ふんの利用促進、サプライチェーンの構築などを進めています。さまざまな実証を行い、モデルケースを設計していきたいと考えています。

(株)TOWINGのサイトはこちら
https://towing.co.jp/

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