特集

「お米の流通に関する有識者懇話会」生産・流通・消費の有識者から多様な意見

2026.01.26
米穀部、広報・調査部

 全農は、昨今のお米をめぐる環境の変化を踏まえ、さまざまな立場の皆さまのご意見に真摯(しんし)に耳を傾け、生産者と消費者の相互理解につなげていきます。第1回は「生産者に聴く」、第2回は「流通関係者・消費者に聴く」、第3回は「研究者・情報発信者に聴く」をテーマに実施しました。


お米の流通に関する有識者懇話会全体を通してのコメント

全農 桑田義文代表理事理事長

 全農は持続可能な米作りの展望と課題を探るため、「お米の流通に関する有識者懇話会」を開催します。米不足とそれに伴う備蓄米の放出、作況指数廃止など情勢が急変する中、生産・流通・消費のあり方を多様な視点で議論いただき、生産者と消費者の距離を少しでも縮めていければと考えています。結論を急がず、米文化と安定供給の未来を考える場となれば幸いです。

ファシリテーター 佐藤洋一郎氏(農学者/総合地球環境学研究所 名誉教授)
 米価だけでなく、米食文化や稲作の歴史を再考する必要があります。田んぼは森から水とミネラルを受け、海へ流し魚食文化を育みます。水田の衰退は魚不足にも影響するため、多面的機能を持つ田んぼの価値を強調したいです。日本は水制御に苦労し、技術を積み重ねてきた歴史があります。こうした知識と文化を踏まえ、幅広い視点で米の問題を考えることが重要です。

【第1回】生産者に聴く

(左から)全農の金森正幸常務理事、桑田義文代表理事理事長、農学者の佐藤さん、大津さん、佛田さん、米利休さん
日程 2025年10月28日
場所 JAビル(東京都千代田区)

登壇者(有識者)の紹介・コメント

大津愛梨氏(米農家/NPO法人田舎のヒロインズ理事長)

 南阿蘇の景観に魅せられて就農し、家族でO2Farmを運営。水田・牧草地・あか牛を組み合わせた環境保全型の循環農業を実践し、世界農業遺産の草原管理も継承しています。

 観光との連携で移住者が増え地域活性化に貢献する一方、棚田保全や小水力発電など制度・費用の課題が残ります。生態系モニタリングや近自然工法を進め、景観・生物多様性・地域循環を統合した持続可能な農業モデルの発信を目指しています。

佛田利弘氏(㈱ぶった農産代表取締役会長)

 1988年に農業法人を設立し、かぶら寿司(ずし)などの加工を含む6次産業化を展開。昨年は息子へ経営を継承し、「Empowering the Region」を掲げ地域密着を強化しています。

 34haで特別栽培米を生産し、価格改定後も固定顧客を維持しつつ、肥料・農薬削減を進めています。今後は仕組みとして継承できる経営への転換や外部連携による技術開発、GHG(温室効果ガス)削減型栽培の確立を目指しています。地域全体での価値創出が重要で、農協と全農には共創型の連携が求められています。

米利休(こめのりきゅう)氏(米農家/利休宝園代表)

 祖父の離農を機に就農し、SNS発信で自家米の高付加価値販売に成功。反響を得て法人HIRRを設立し33haを耕作、予約販売4時間で3000万円超の売り上げを達成しました。

   一方、高齢化による離農増加で農地の引き受けが拡大し、収量減や労働負担など現場の厳しさを痛感しています。農業の魅力を発信し若手参入を促す存在を目指しつつ、定着のための環境整備が課題です。農協・全農には多様な経営体と利益を共有できる柔軟な連携が求められます。

【第2回】流通関係者・消費者に聴く

意見を述べる有識者
コメントをする桑田理事長
日程 2025年11月26日
場所 ベルサール八重洲(東京都中央区)

登壇者(有識者)の紹介・コメント

秋元里奈氏((株)ビビッドガーデン 代表取締役社長)

 2016年に創業し、生産者が直接消費者に販売できる日本最大級の産直ECである食べチョクを運営。登録会員120万人、生産者1万2000人を抱え、米や野菜など多様な商品を扱っています。中小規模農家の販路拡大と高付加価値販売を支援し、米価高騰で登録数は4倍に増加しています。課題はデジタルリテラシー向上と物流コスト削減であり、業界連携や地方活性化を通じて持続可能な農業を目指しています。

熊﨑伸氏(コープデリ生活協同組合連合会 代表理事理事長)

 コープデリは1都7県で550万人の組合員を持つ生協連合で、宅配と店舗を通じ生産者と消費者をつないでいます。米需給逼迫(ひっぱく)時には販売制限や抽選販売を余儀なくされ、安定供給の重要性を痛感しました。

 産直や環境保全に取り組み、佐渡トキ応援米や耕畜連携などで食料自給率向上に貢献します。田んぼは食料・環境・文化を支える社会共通資産であり、協同組合間連携や環境配慮型米の価値可視化などを提案し、米文化を未来へ継承することを目指します。

秋葉弘道氏((株)アキダイ 代表取締役社長)

 創業34年の小売業者として米騒動を2度経験し、米の重要性を痛感しています。近年は災害不安で備蓄需要が急増し、米不足も発生。消費者は価格に敏感ですが、過度な安売りは生産者を圧迫し、高騰は米離れを招くため適正価格維持が不可欠です。肥料・燃料高騰対策と安定供給体制の構築が急務であり、国産米を守る制度整備を望みます。

【第3回】研究者・情報発信者に聴く

活発な議論が行われた
プレゼンをする渡辺氏
日程 2025年12月23日
場所 JAビル(東京都千代田区)

登壇者(有識者)の紹介・コメント

渡辺努氏(東京大学大学院 経済学研究科 名誉教授)

 日本の米価高騰は、長期デフレからインフレへの転換期に起きた需要急増が主因です。

 特に24年夏は大規模地震への不安から買いだめが発生し、在庫切れが拡大しました。店側はフェアネス規範から値上げを避け、需給調整が働かず混乱が深まりました。今後は安定供給への明確な発信と、非常時の価格ルールの整備が重要になってきます。

柏木智帆氏(お米ライター/米・食味鑑定士)

 令和の米騒動は米価高騰と品薄で不安を招く一方、米の価値を再認識する契機となりました。日本米の特性や和食文化の重要性が見直され、小学校での完全米飯給食など食習慣改善の取り組みも進みます。米消費減少と離農は食文化に深刻な影響を及ぼします。供給と需要拡大を一体で推進し、安定供給と食料安保に資する取り組みが不可欠です。

関谷直也氏(東京大学大学院 情報学環総合防災情報研究センター長・教授)

 米騒動の背景には、異常気象による供給不足だけでなく、不安心理が連鎖して需要の急拡大を招いた「予言の自己成就」が働いたことが挙げられます。スーパー等の棚の空白やSNSが不安を増幅し、買いだめが加速しました。根底には米の流通構造や米生産に対する社会の理解不足があります。可視化と正確な情報発信がパニック回避に不可欠です。

篠原信氏(国立農業系研究機関 所属)

 私は米騒動を、貧困による食行動の変化や農業の脆弱性から捉えています。日本は石油依存型農業のため自給力が極めて低く、中山間地の耕作放棄も深刻です。地域社会の維持のためには農家を増やすだけでなく、非農家人口を増やすことが重要です。准組合員の役割強化や企業・団体の地方移転など、多様な人が農村に暮らせる仕組みづくりが食料安全保障の鍵となります。

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