特集

佐渡島の農と生きもの調査で見えたトキと育む豊かな自然と農家の営み

2026.11.02
広報・調査部

 「全国農協観光協会」と「佐渡トキファンクラブ」が共同で企画したツアー「トキと出会い人とつながる~佐渡島の農と食を味わう旅」が、10月11、12日に開催されました。2回目となる今回は、トキが暮らす佐渡島の棚田を舞台に全国から集まった参加者が、環境保全の取り組みや生きもの調査を体験。地域の農家との交流を通じて、トキを育む農業と豊かな自然のつながりについて、現場の声を取材しました。

空を舞うトキ

 世界農業遺産に認定された島、佐渡島。トキファンクラブ(佐渡市委託事業)の参加者らと美しい海と里山に囲まれた椎泊(しいどまり)地区を訪ね、トキと人が共生する農業の営みに触れました。生きもの調査や農家との交流から見えてきたのは、トキを支える豊かな自然と、それを未来へつなぐ人々の取り組みでした。 
 佐渡島は、トキが生息する島として知られています。しかし、トキが暮らせる環境は、トキだけで成り立っているわけではありません。餌となるドジョウやカエル、水生昆虫など、さまざまな生きものが生息できる田んぼや里山があってこそ、トキは野生の中で生きていくことができます。
 佐渡島ではトキの野生復帰を支えるため、「朱鷺(とき)と暮らす郷づくり認証制度」が導入されており、環境を大切にしながらお米づくりをするための要件が定められています。その認証を受けるためには、田んぼの畦に除草剤を使わないこと、農薬や化学肥料の使用を慣行の半分以下に抑えること、生きものを育む農法の実施、年に2回の生きもの調査の実施などが求められます。

生きものの豊かな田んぼでの江掃除体験と生きもの調査

 農家が実施する「生きものを育む農法」の取り組みの一つに、「江(え)」と呼ばれる土の水路づくりがあります。稲の生育のために田んぼの水を抜く際、生きものたちが避難できる場所を確保するための仕組みです。小さな溝ではありますが、多くのオタマジャクシやヤゴなどが集まり、生きものの命を守る大切な役割を果たしています。今回は、この江を掃除する作業を体験しました。泥や雑草がつまった江を鍬(くわ)で掘り起こす作業は想像以上に力が必要で、足を取られながらの作業に参加者からは苦労する声も聞かれました。しかし、こうした地道な作業が生きものたちのすみかを守り、トキが暮らせる環境づくりにつながっていることを知り、その大切さを実感しました。
 生きもの調査では、佐渡トキファンクラブ事務局の服部謙次さんが講師を務めました。参加者は田んぼに網を入れ、そこに生息する生きものを観察しました。網を引き上げるたびに、ドジョウや水生昆虫などさまざまな生きものが姿を見せ、参加者は興味深そうに観察していました。服部さんから、見つけた生きものについての解説があり、参加者からは「田んぼにこんなにたくさんの生きものがいるとは思わなかった」「生きものの種類の多さに驚いた」といった声が聞かれました。
 調査を通じて確認された生きものたちは、トキにとって重要な餌資源であると同時に、水田環境の豊かさを示す指標でもあります。また、生きものを探しながら田んぼの中を歩くことで、農家の皆さんが日頃から取り組んでいる環境保全活動の意義をより身近に感じることができ、佐渡ならではの自然環境が育む生物多様性の価値を実感する調査となりました。

江掃除について農家の伊藤さんが説明
江掃除体験の様子
生きものの説明をする服部さん
生きものを探す参加者

農家との交流から見えた取り組み

 生きもの調査後は、農家と参加者による勉強会が開かれ、トキを取り巻く環境やそれを支える農家の取り組み、「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」「生きものを育む農法」「トキの野生復帰に向けた歩み」について説明が行われました。
 日本産のトキは2003年に絶滅しましたが、その後、中国から贈呈されたトキの人工繁殖が進められ、佐渡島では08年から野生復帰に向けた放鳥事業が始まりました。こうした取り組みと地域ぐるみの環境保全活動が実を結び、昨年末時点で野生に生息するトキの推定個体数は473羽まで増えたといいます。
 参加者は、地域の農業が健全に持続することによって、トキの野生復帰が支えられていることへの理解を深めるとともに、農業の持つ多面的な役割や価値について改めて考える機会となりました。

トキが教えてくれること

 かつて野生のトキが絶滅した佐渡島では、多くの人々の努力によって自然環境の再生が進められてきました。そして今、空を舞うトキの姿は、全島一丸となって取り組んできた環境保全活動の象徴となっています。
 トキが舞う佐渡の風景の裏には、生きものと共生する農業と、それを支える農家や地域の方々のたゆまぬ努力があります。佐渡での体験は、人と生きものが共生する社会のあり方を考える貴重な機会となり、未来につながる農業の姿を感じさせてくれました。

田んぼで餌をとるトキ
棚田から見える風景

佐渡トキファンクラブの入会、活動内容はこちらから https://sadotoki.jp/

佐渡トキファンクラブ公式SNSはこちらから

・X https://x.com/sadotoki310

・Instagram https://www.instagram.com/sadotoki310/

・Facebook https://www.facebook.com/sadotoki310

全国農協観光協会のホームページはこちら https://www.znk.or.jp/

カテゴリー最新記事

JA全農ウィークリー
記事を検索する 検索窓を閉じる
  • 掲載年月日
    ~
  • 地域
  • 組織名
  • キーワード