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広報・調査部

インタビュー ㈱おてつたび 代表取締役CEO 永岡 里菜さん 人手不足の時代に「働きに行きたい」環境づくりを

地域の現場と旅する若者をマッチング

 「株式会社おてつたび」は2018年7月に設立され、人手不足に悩む地域と、働きながら地域の魅力に触れたい若者とのマッチングを展開しています。現場の労働力不足に対する一手として、地域の魅力を知ってもらう手立てとして注目を集める同社の活動について、創設者で代表の永岡里菜さんに聞きました。


ながおか・りな 三重県尾鷲市出身。千葉大学卒業後、イベント企画・制作会社にディレクターとして入社。官公庁・日本最大手のEC企業をはじめ数多くの企業のプロモーションやイベントの企画提案・プランニング・運営を担当。退職後は、農水省と共に和食推進事業をゼロから作り上げる。その後フリーランスを経て、地域にほれ込み2018年7月に「株式会社おてつたび」を設立。

地域の人から地域の魅力を知る

 私は三重県尾鷲(おわせ)市という漁業と林業の町に生まれました。自分にとってはいろんなものを教えてくれた土地なのですが、大学進学と同時に関東に来ると、(尾鷲市を)誰も知らない、来たこともないというところにひっかかりを感じていました。会社勤めをしていたときに、全国各地を飛び回る仕事をしていた際に、尾鷲みたいに、一見何もなさそうに見えてしまうけれど、地域の人から地域の魅力を知ると、気づいたら自分にとっては何もない地域ではなく、特別な地域になっている、ということを多く経験して、日本各地にあるそのような一見何もなく見えてしまう地域を知るきっかけづくりをしたいと思って独立しました。

 それからいろんな試行錯誤がありました。例えば、地域の人と交流するために(お酒を)飲めるサービスを考案したりしました。しかし、あったらいい“nice-to-have”(あるといいもの)では単なる自己満足になってしまうので、困っていることに対処する“win-win”(両者にメリットがある)になるものを探していました。
 私自身、前職を退職後は東京の家を解約して、半年ぐらいひたすらいろんな地域を巡っていく中で、多くの方が短期的な人手不足に困っているというのを聞いたことと、私自身も前職の時に仕事を通じて地域の魅力を知ったという経験もあって、ちょうど今から2年前くらいに「おてつたび」の実証実験も含め、小さくスタートしました。

Webサイトで 地域の現場と若者をマッチング

 「おてつたび」は、短期的な人手不足に困っている地域の方が、仕事の内容や報酬などをWebサイトに登録すると、大学生や若手社会人などの利用者がそれを見て、希望した先に行って働くというものです。

 現地に行くまでの交通費は利用者負担ですが、宿泊は農家さんなど受け入れる側で準備します。農家さんの家だったり、従業員の寮だったりすることが多いです。

 「住み込みバイト」「季節労働」というのはこれまでもあったわけですが、どちらかというと怖そうだったり、不安定そうだったりとネガティブな先行イメージがあったと思います。ただ、私たちは一緒に仕事をすることは、自然と地域の方と関係性ができ、地域のことを知れるので、とても尊いことだと思っています。ですので、「おてつたび」では、それらの言葉をわくわくするようなものにリブランディング(再構築)していきたいと考えています。

 当社は宣伝などを行っていないのですが、口コミやメディア情報をもとに利用者が増えており、ユーザー過多な状態で、新しい「おてつたび」先がオープンすると直ぐに埋まってしまう状況です(現在の倍率は6~10倍)。

 そんな状況を見ながら、地域に興味を持つ人が増えているというのは、すごく明るい未来だなと思います。

 
アグベンチャーラボの支援で農業を拡大

 「おてつたび」は、旅館の仕事から始まったのですが、おかげさまでメディアにも取り上げられるようになり、その中で問い合わせが多かったのが1次産業でした。農家さんから直接問い合わせがくることもありましたし、利用者からも「農業ないんですか」と聞かれることもありました。もともと私自身も1次産業の地域出身という事もあり、スタート時から農業にも早く対応させたいと思っていましたので、小さく準備を始めていました。

 そんな中、昨年(2019年)5月、JAグループのイノベーションの拠点 AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)の「JAアクセラレーター」に採択され、約4カ月にわたり、JAグループの支援を受けました。JAおいらせ(青森県)・JA紀の里(和歌山県)・JAおきなわの3JAにご協力いただき、JAさんが窓口になって、人手不足の農家さんに話をつないでもらったり、募集案内づくりの手伝いをしてもらったりして、各地で「おてつたび」を活用いただくことができました。

AgVenture Lab「JAアクセラレーター」の成果発表会「Demo Day」で報告する永岡さん
 
「働きに行きたい」環境づくりが重要

 農家さんは、最初は「本当に役に立つのか」「世話する方が大変なのでは」「遊び半分で来られても困る」という懐疑的な方も多いのですが、実際やってみると、利用者の積極的な働きぶりに満足したという声が聞かれます。

 「おてつたび」で大切にしていることとして、「体験を売っていない」ということを利用者に必ず伝えるようにしています。「おてつたび」で定義している「体験」とは、美しいところ、楽しいところだけを切り取って見せてもらう代わりに、利用者はそれに対するお金を払うことです。「おてつたび」では、人手不足にコミットしているので、利用者に「仕事は大変だよ」というのは必ず伝えています。利用者からも「大変だった」「1日目は本気(マジ)かと思った」と感想があるくらいですが、自分たちが食べているものがどれだけ大変な形で作られているのかというのは知るべきことですし、一生懸命仕事に向き合うからこそ、地域の方との信頼関係も築けると私たちは信じていますし、実際に「おてつたび」後の再訪率が現在6割程というデータからも、それらを物語っているかと思います。

 労働力不足にはどこも困っていますし、日本のこれからの大きな課題になると思いますが、だからこそ単なる「労働力」ということだけだと、いくらお金を積んでも働き手が来なくなる時代が絶対くると思います。スマート農業の考えは重要ですし、確実に広がっていくと思いますが、人の手によらないといけない部分もまだまだあると思いますので、そういったところに、働きに行きたいという環境を整えていくことが中長期的に重要だと思います。地域の皆さんや若い方たちと一緒に、そういう世界をつくりながら、人手不足を人や地域と出会うチャンスに変えていけたらうれしいと思います。

ゴボウを収穫する「おてつたび」利用者(青森県三沢市で)

 

 「JAとのコラボおてつたび」がスタート!
「おてつたび」では、JAと連携したプロジェクトが始まりました。ご賛同いただけるJAを募集しております。お問い合わせは特設サイトからお願いします。
特設サイトはこちら
https://otetsutabi.com/features/ja

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