特集

特集
米穀部

2年目を迎える国産 「子実とうもろこし」の大規模実証

初年度は収量や収支、労働生産性に手応え 飼料利用での品質評価、輪作体系の試験も

 全農は、需要のほとんどを輸入に依存する「子実とうもろこし」を国内の水田輪作で生産することを目指して大規模実証を行っています。この取り組みによって米価の安定や、海外穀物輸入のリスクヘッジ、長年の課題である食料自給率の改善などが期待されます。


子実とうもろこしと大規模実証

 「子実とうもろこし」とは、トウモロコシの子実だけを利用するもので、わが国では、飼料用を中心に年間1500万t以上の需要があり、そのほぼ全量を輸入に依存しています。  主食用米から「子実とうもろこし」への作付け転換によって、(1)主食用米の需給改善と米価の安定(2)高騰・不安定化する海外穀物輸入のリスクヘッジ(3)食料自給率の改善――などが期待されます。

 また、「子実とうもろこし」には、(1)労働生産性が高いこと(面積当たりの労働時間が少ないこと)(2)大豆や小麦など、輪作作物の生産性向上に寄与すること(3)耕種農家の所有機械を中心に作業が可能であること――など、生産上の有利点があるほか、堆肥の利活用による耕種農家と畜産農家が連携した循環型農業の実現にもつながります。

 令和3年春より米穀生産集荷対策部(現 米穀部)で「子実とうもろこし」による水田輪作の検討を開始し、同秋から、生産・流通・飼料利用におけるメリットや課題を確認するために、畜産生産部・耕種総合対策部・耕種資材部・施設農住部の参画による全会的な検討体制を構築しました。さらに、宮城県本部とJA古川、JA全農北日本くみあい飼料㈱などと連携して、令和4年から本州以南で最大の大豆産地である宮城県大崎市で、「子実とうもろこし」と大豆による水田輪作の大規模実証に着手しました。

子実とうもろこし
子実とうもろこしの収穫

 

令和4年度の実証結果

 JA古川管内の大豆生産組合を中心とした31経営体91haの圃場(ほじょう)で「子実とうもろこし」を栽培しました。水稲や大豆と作業時期が重複しないよう、4月中下旬と5月中下旬の2回に分けて播種(はしゅ)し、それぞれ、9月下旬と10月下旬に収穫作業を行いました。また、5、8、9月に現地見学会を開催し、全国のJA関係者や行政関係者など延べ約700人が参加しました。

 残念ながら6月にひょう害、7月に河川氾濫を伴う風水害が発生し、被害面積は実証圃場の4分の3に及びました。冠水や苗流出、折損や倒伏などの被害の影響もあり、乾燥調製後の全出荷数量は302t、平均収量は10a当たり330kgにとどまりました。ただし、被害が軽度な圃場の10a当たり平均収量は512kg、最高収量は739kgと、次年度に向けて手応えを感じる結果となりました。

 栽培面における課題については、排水不良による湿害(生育抑制や欠株)、播種粒数の不足(苗立ち本数が収量に大きく影響)、害虫による食害(アワノメイガの幼虫が赤かび病を助長)、カラスによる食害(圃場の外周で特に多い)、アサガオ類などの雑草害などを確認しました。

 収穫された「子実とうもろこし」はJAの大豆センターで乾燥・調製を行った後、一部はJA古川管内の肥育農家に単味飼料として供給され、給与も始まりました。残りはJA全農北日本くみあい飼料で配合飼料原料として使用される予定です。

 生産農家の収支は、10a当たり収量512kgの場合は10a当たり1万5989円、目標収量の同700㌔では2万1515円となりました。また、労働生産性については、それぞれ1時間当たり8415円、1万1324円と高位であることを確認しました。

 

子実とうもろこし栽培こよみ(簡易版)

 
 
取り組みの全体イメージ
 
令和5年度の取り組み

 令和5年度は、4年度に明らかとなった課題の解決に取り組みます。まず、栽培にあたっては、施肥設計の見直し、播種精度向上、アワノメイガ防除、適期収穫を徹底し、収量確保と品質向上を目指します。次に、乾燥調製や物流においては、施設運営の効率化、次年度以降のバルク輸送に向けた検討に着手します。飼料利用にあたっては、今後の使用量拡大に向けた品質評価方法の確立に取り組みます。

 また、4年度に「子実とうもろこし」を栽培した圃場で大豆を栽培し、増収効果など輪作体系全体の収益性の検証を行うほか、「子実とうもろこし ⇒大豆⇒乾田直播」による超省力大規模輪作体系の確立に向けて、農研機構ほかと連携した3カ年実証を開始します。

子実とうもろこしの肉牛への給餌

カテゴリー最新記事

ページトップへ